上半期のG1も残すところあと2つとなった。今年はJRAで馬券が発売された海外の競走が10あったので、年明けから東京優駿-G1までの22節で20のG1が行われたことになり、均すとほぼ毎週欠かさずG1があったようなものだ。海外のG1では日本調教馬が4つに勝っていて、複数勝利の馬はいないので14頭で14勝。下表から1〜3着馬の数で簡易リーディングサイアーを抽出すると、1位ロードカナロア(3勝2着1回3着1回)、2位キタサンブラック(1勝2着1回、3着1回)、3位キズナ(2着3回、3着1回)、4位ドゥラメンテ(2着1回、3着2回)となるが、ロードカナロアとドゥラメンテのほか、ルーラーシップ、リオンディーズの父でありサートゥルナーリアの父系祖父であるキングカメハメハの勢力が大変大きくなっていることも分かる。もちろん、サンデーサイレンスUSAの血のサポートがあってこそのキングカメハメハという前提はあるものの、現在のサイアーランキングで1位キズナ、2位ロードカナロアの競り合いがG1ひとつで容易に逆転する接近戦としてずっと続いているように、サンデーサイレンスUSA直系とキングカメハメハ系の勢力争いはもつれ合ったまま年末を迎えるのではないだろうか。覇権維持を狙うディープインパクト〜キズナ系にとっては、ブラックタイド〜キタサンブラック系が敵対的近親者として台頭してきており、種牡馬の世界は既に先の見えない戦国時代に入っているのかもしれない。 |
上半期G1のトレンド 1〜3着馬とその父 | |||
競走名 | 1着馬 | 2着馬 | 3着馬 |
日付、距離 | 父馬 | 父馬 | 父馬 |
サウジカップ | フォーエバーヤング | ロマンチックウォリアーIRE | ウシュバテソーロ |
2月22日、ダ1800 | リアルスティール | Acclamation | オルフェーヴル |
フェブラリーS | コスタノヴァ | サンライズジパング | ミッキーファイト |
2月23日、ダ1600 | ロードカナロア | キズナ | ドレフォンUSA |
高松宮記念 | サトノレーヴ | ナムラクレア | ママコチャ |
3月30日、芝1200 | ロードカナロア | ミッキーアイル | クロフネUSA |
ドバイターフ | ソウルラッシュ | ロマンチックウォリアーIRE | Maljoom |
4月5日、芝1800 | ルーラーシップ | Acclamation | カラヴァッジオUSA |
ドバイシーマクラシック | ダノンデサイル | Calandagan | ドゥレッツァ |
4月5日、芝2410 | エピファネイア | Gleneagles | ドゥラメンテ |
大阪杯 | ベラジオオペラ | ロードデルレイ | ヨーホーレイク |
4月6日、芝2000 | ロードカナロア | ロードカナロア | ディープインパクト |
桜花賞 | エンブロイダリー | アルマヴェローチェ | リンクスティップ |
4月13日、芝1600 | アドマイヤマーズ | ハービンジャーGB | キタサンブラック |
皐月賞 | ミュージアムマイル | クロワデュノール | マスカレードボール |
4月20日、芝2000 | リオンディーズ | キタサンブラック | ドゥラメンテ |
クイーンエリザベス2世C | タスティエーラ | プログノーシス | Calif |
4月27日、芝2000 | サトノクラウン | ディープインパクト | Areion |
天皇賞(春) | ヘデントール | ビザンチンドリーム | ショウナンラプンタ |
5月4日、芝3200 | ルーラーシップ | エピファネイア | キズナ |
NHKマイルC | パンジャタワー | マジックサンズ | チェルビアット |
5月11日、芝1600 | タワーオブロンドン | キズナ | ロードカナロア |
ヴィクトリアマイル | アスコリピチェーノ | クイーンズウォーク | シランケド |
5月18日、芝1600 | ダイワメジャー | キズナ | デクラレーションオブウォーUSA |
優駿牝馬 | カムニャック | アルマヴェローチェ | タガノアビー |
5月25日、芝2400 | ブラックタイド | ハービンジャーGB | アニマルキングダムUSA |
東京優駿 | クロワデュノール | マスカレードボール | ショウヘイ |
6月1日、芝2400 | キタサンブラック | ドゥラメンテ | サートゥルナーリア |
※今年ここまでのGT競走(日本調教馬が勝った外国の競走を含む)を対象。太字は延べ3回以上登場する種牡馬 |
この上半期で複数G1勝利の馬がいないのはそれだけタフな戦いが多いせいでもあって、王者ロマンチックウォリアーIREを破った○ソウルラッシュにはいったんいわゆる目に見えない疲れが出るのか、あるいは更に上昇するのか、2つの可能性は見ておかなければならないだろう。米ホープフルS-G1のヘネシーUSAらが出る牝系で、こちらもノーザンテーストCAN、ストームバード、トライマイベストUSAとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔の血を3本持つ。 ▲ブレイディヴェーグはロードカナロアとディープインパクトの組み合わせで、これはディープインパクトともキングカメハメハとも相性のいいストームキャットの血が配合の要となっている。祖母はドラール賞-G2など仏重賞に3勝し、産駒ミッキークイーンは優駿牝馬-G1と秋華賞-G1に勝った。 キズナはG1勝ちでサイアーランキング首位の面目を施したいところ。△シックスペンスは母フィンレイズラッキーチャームUSAが米国でダート7FのマディソンS-G1など5つの重賞を含む11勝を挙げた活躍馬。△ダディーズビビッドはイトコにアドマイヤムーンやエフフォーリアがいて、3代母ケイティーズの娘に女傑ヒシアマゾンUSAがいる名門。 |
競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2025.6.8
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