2025宝塚記念


ステイゴールド・カムバック

 かつてFIFAワールドカップの年の宝塚記念はサッカーボーイ関係の血統が活躍するという冗談が一部で信じられていて、実際、下表の通り1998年ステイゴールド2着(9番人気)、2002年ツルマルボーイ2着(4番人気)、2006年バランスオブゲーム3着(9番人気)、2010年ナカヤマフェスタ1着(8番人気)、2014年ゴールドシップ1着(1番人気)と穴党も喜ぶ結果にはなっていたのだが、表をよく見れば分かるように毎年のようにステイゴールド産駒の活躍が続いた時期もあって、サッカーボーイとワールドカップにはあまり関係がないと露呈してしまった。そのため梅雨時に強いステイゴールドが宝塚記念-G1でも強いというごくまっとうな結果がしばらく続いたあと、2010年代後半に入るとそれさえも忘れられるようになった。しかし、一昨年、ドリームジャーニーの娘で中山牝馬S-G3を勝ったばかりのスルーセブンシーズがイクイノックスからクビ差のきわめて惜しい2着となり、ステイゴールド系が宝塚記念-G1に強い(場合もある)という傾向は細々と継続していることを示した。
 今年からこのレースは2週早まって1995年当時の位置に戻った。近畿の平年の梅雨入りは6月6日ごろなので、昨年までのどっぷり梅雨ということはなく境目の日程になるため、馬場が悪化する可能性もいくらか下がり、ステイゴールド系のチャンスもいくらか減ることになるのかもしれない。ともあれ、今年はいくらかの降雨が避けられないようであり、◎メイショウタバルには好機が巡ってきた。父ゴールドシップは宝塚記念-G1に3度出走し、一部繰り返しになるが2013年1着(2番人気)、2014年1着(1番人気)、2015年15着(1番人気)の成績を残した。3度目の大敗はゲートで立ち上がって弊社測定によれば約2秒の出遅れがあり、勝ち馬からの差は1秒2だった。ステイゴールド系の気性に関しては面白おかしく時には擬人化までして表現されることが多いが、実際には少し繊細だったり怖がりだったり気まぐれだったりというだけのこともあるだろう。本馬も完勝か大敗かという面があったが、前走はソウルラッシュとロマンチックウォリアーIREの争いから23/4馬身の5着に粘っているし、調教でも引っ掛かって速い時計が出ることがなくなった。それが結果につながるかどうかは別として、競走馬としては良い方向への変化ではあろう。母メイショウツバクロは石橋守騎手が乗ってダート1400mの新馬戦を逃げ切り、その後、金沢の交流1400mで1勝を加えた。その父フレンチデピュティUSAは産駒エイシンデピュティが2008年のこのレースを勝っているほか、ブルードメアサイアーとしても優秀で、ジャパンカップ-G1のショウナンパンドラ、天皇賞(春)-G1のレインボーラインをゴールデンサッシュとの組み合わせから送り出している。祖母ダンシングハピネスは芝1200mで1勝。産駒メイショウカンパクは京都大賞典-G2など6勝を挙げた。血統表4〜5代目にはヴァイスリージェント、ノーザンテーストCAN、ザミンストレル、ニジンスキー、ノーザンアンサーCANと今年のG1の隠れたトレンドであるE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が5頭も並んでいる。そのほか、父の母の父メジロマックイーンは1993年の勝ち馬で、祖母の父ダンスインザダークは娘の仔ラブリーデイが2015年に勝った。


ダイナサッシュ一族の宝塚記念実績(牡牝混合系統図)
ダイナサッシュ(牝、1979、父ノーザンテーストCAN)
  サッカーボーイ(牡、1985、父ディクタスFR)
  | ツルマルガール(牝、1991)
  | | ツルマルボーイ(牡、1998、父ダンスインザダーク)2002[2]、2003[2]
  | ヒシミラクル(牡、1999)2003[1]
  ベルベットサッシュ(牝、1986、父ディクタスFR)
  | ホールオブフェーム(牝、1991、父アレミロードUSA)
  |   バランスオブゲーム(牡、1999、父フサイチコンコルド)2006[3]
  ゴールデンサッシュ(牝、1988、父ディクタスFR)
    ステイゴールド(牡、1994、父サンデーサイレンスUSA)1998[2]、1999[3]
    | ドリームジャーニー(牡、2004)2009[1]
    | | スルーセブンシーズ(牝、2018)2023[2]
    | ナカヤマフェスタ(牡、2006)2010[1]
    | オルフェーヴル(牡、2008)2012[1]
    | ゴールドシップ(牡、2009)2013[1]、2014[1]
    キューティゴールド(牝、2004、父フレンチデピュティUSA)
      ショウナンパンドラ(牝、2011、父ディープインパクト)2015[3]
( )内に父名がないのは父系統

 ○ドゥレッツァは一昨年の菊花賞-G1を最後に勝利から遠ざかっているが、ジャパンカップ-G1でドウデュースからクビ差2着、ドバイシーマクラシック-G1では強豪レベルスロマンスに先着しての3着だから地力では最右翼といえる。ここは父が2着に終わって故障、引退となったいわくつきのレースだが、2022年のタイトルホルダー同様、父の取り残したG1を集めていくことになるのかもしれない。母モアザンセイクリッドAUSは3歳時にニュージーランドオークス-G1(2400m)、サンラインヴァーズ-G3(2100m)に勝ち、4歳時にワイカトタイムズゴールドカップ-G3(2400m)に勝ってオークランドカップ-G1(3200m)で3着となったステイヤー牝馬。母の父モアザンレディはスプリンターに近い早熟なマイラーだったが、4代母フルーイションの産駒にブリーダーズカップターフ-G1のノーザンスパー、ドンカスターカップ-G3のネラー、同じくグレイトマークウェスらがいるステイヤー牝系とはいえる。ヴィクトリアマイル-G1に勝ったテンハッピーローズは4代母フルイションの玄孫で、5代母ウェルシュフレイムの孫に愛ダービー-G1に勝った英オークス馬サルサビルがいる。

 ▲ローシャムパークは3代母が天皇賞(秋)、優駿牝馬に勝ったエアグルーヴ。勝ったレースよりむしろジャパンカップ-G1の2着(2回)、サイレンススズカ、ステイゴールドに続く3着となった宝塚記念の勇敢な戦いが評価される名牝ということもできる。父ハービンジャーはなぜか最近フィリーサイアーの傾向を強めてきているが、4歳時にキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1をレース史上最大の11馬身差で制した名馬。母の父キングカメハメハはこのレースで直子に2015年ラブリーデイと2018年ミッキーロケットの2頭の勝ち馬が出ている。こちらはニジンスキー、トライマイベストUSA、ノーザンテーストCANとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔を3本備えている。

 産駒の15年連続G1制覇がかかるディープインパクトは4頭出し。△ジャスティンパレスは天皇賞(春)-G1の着順のせいか評価が下がり過ぎ。名門マルガレーゼン牝系の△ヨーホーレイクは既に7歳だが、まだ13戦しか消化していない。伸びる余地は大きい。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2025.6.15
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