2025大阪杯


父と祖父を追う種牡馬キズナ

 初年度産駒が2歳となった2019年、キズナは総合サイアーランキング(JBISサーチによる、中央+地方)で48位となった。2歳だけの稼ぎによる順位である。ちなみに父のディープインパクトは初登場40位、父系祖父サンデーサイレンスUSAは44位だった。サンデーサイレンスUSAは翌年、初年度産駒が3歳を迎えると一気にランキング1位となり、以降2007年まで長い覇権を維持した。ディープインパクトは2年目の4位を経てチャンピオンサイアーとなり、翌2012年から11年連続で首位を守った。キズナは2年目の2020年12位、2021年と2022年4位、2023年3位を経て、2024年に初めてチャンピオンとなった。これは配合相手も競争相手も違うのだから父祖と比較するものでもないが、産駒デビューから6年目にして得た首位の座を今年も守っていて、フェブラリーS-G1をロードカナロア産駒が勝った2月末時点でこそ首位を譲ったものの、すぐにその地位を奪還して今に至る。下表に示した通り、世代別の重賞勝ち馬は初年度産駒デビュー後のどの種牡馬にもありがちな下降から脱出して、3、4歳世代では質も量も顕著な充実を見せている。今年3月末の時点での重賞勝ちは7と昨年を上回るペースで増えており、そのいずれもが3、4歳世代の若い力である点に今年の勢いが表れている。
 ◎シックスペンスは父が勝った東京優駿-G1だけ9着に敗れたが、あとの5戦は全勝。母のフィンレイズラッキーチャームは米国産で2〜5歳時米国で19戦し、5歳4月のマディソンS-G1など11勝を挙げた。その内訳は2、3歳時の5勝が5〜6F、4、5歳時の5つの重賞を含む6勝は6〜7F、しかもそのほとんどが逃げ切りだから、そのスプリンターとしての資質が仔にも伝わった結果3歳春時点での2400m克服の妨げとなった可能性は否定できない。祖母デイオブヴィクトリーは普通のマイラーで、重賞勝ちはないが、アーリントンオークス-G3やミントジュレップH-G3で4着となっている。母の父トワーリングキャンディはクリプトクリアランス系の名種牡馬キャンディライドの直仔で、3歳暮れに7FのマリブS-G1で勝ったほかは中距離で活躍した。祖母の父ヴィクトリーギャロップはクリプトクリアランスの直仔で、ベルモントS-G1やホイットニーH-G1の米G12勝。ドバイワールドC-G1で3着となった。母が4×3の近交となっているクリプトクリアランスは2歳時5戦2勝、3歳時15戦4勝、4歳時14戦3勝、5歳時10戦3勝と条件馬のような出走数でG1に4勝した名馬。4代母はヴァイオレットH-G3に勝ち、産駒にフラワーボウル招待S-G1のピュアクラン、孫にフリゼットS-G1のスカイディーバがいる牝系で、5代母ワットアサマーは1977年の米チャンピオンスプリンター。スピードの塊のような米国血統の母とキズナの組み合わせは初の2000mにはまる可能性がある。


重賞ウイナー量産体制に入ったキズナ
馬名生年性別母名母父名主な勝ち鞍とG1入着
アカイイト2017ウアジェトシンボリクリスエスUSAエリザベス女王杯-G1
ディープボンド2017ゼフィランサスキングヘイロー阪神大賞典-G2×2、フォワ賞-G2、京都新聞杯-G2、2着=
天皇賞(春)-G1×3、有馬記念-G1、3着=天皇賞(春)-G1
マルターズディオサ2017トップオブドーラUSAGrand Slamチューリップ賞-G2、紫苑S-G3、2着=阪神ジュベナイルF-G1
アブレイズ2017エディンジャングルポケットフラワーC-G3
クリスタルブラック2017アッシュケークタイキシャトルUSA京成杯-G3
シャムロックヒル2017ララアUSATapitマーメイドS-G3
ビアンフェ2017せんルシュクルサクラバクシンオー函館スプリントS-G3、函館2歳S-G3、葵SL
キメラヴェリテ2017ルミエールヴェリテUSACozzene北海道2歳優駿
テリオスベル2017アーリースプリングクロフネUSAクイーン賞、ブリーダーズゴールドC
ハギノアレグリアス2017タニノカリスジェネラスIREシリウスS-G3×2、名古屋大賞典
ソングライン2018ルミナスパレードシンボリクリスエスUSA安田記念-G1×2、ヴィクトリアマイル-G1、富士S-G2、1351ターフスプリント-G3、2着=NHKマイルC-G1
バスラットレオン2018バスラットアマルNew Approachゴドルフィンマイル-G2、ニュージーランドトロフィー-G2、1351ターフスプリント-G3
ステラリア2018ポリネイターIREMotivator福島牝馬S-G3、2着=エリザベス女王杯-G1
ファインルージュ2018パシオンルージュボストンハーバーUSAフェアリーS-G3、紫苑S-G3、2着=ヴィクトリアマイル-G1、秋華賞-G1、3着=桜花賞-G1
アスクワイルドモア2019ラセレシオンゼンノロブロイ京都新聞杯-G2
パラレルヴィジョン2019アールブリュットマクフィGBダービー卿チャレンジT-G3
アリスヴェリテ2020ルミエールヴェリテUSACozzeneマーメイドS-G3
コンクシェル2020ザナIREGalileo中山牝馬S-G3
ジャスティンミラノ2021マーゴットディドIREExceed And Excel皐月賞-G1、共同通信杯-G3、2着=東京優駿-G1
クイーンズウォーク2021ウェイヴェルアベニューCANHarlington金鯱賞-G2、ローズS-G2、クイーンC-G3
シックスペンス2021フィンレイズラッキーチャームUSATwirling Candy毎日王冠-G2、中山記念-G2、スプリングS-G2
ジューンテイク2021アドマイヤサブリナシンボリクリスエスUSA京都新聞杯-G2
サンライズジパング2021サイマーIREZoffanyみやこS-G3、不来方賞、2着=フェブラリーS-G1、3着=ホープフルS-G1、ジャパンダートクラシック
ショウナンザナドゥ2022ミスエーニョUSAPulpitフィリーズレビュー-G2
エリキング2022ヤングスターAUSHigh Chaparral京都2歳S-G3
サトノシャイニング2022スウィーティーガールARGStar Dabblerきさらぎ賞-G3
ナチュラルライズ2022レディマドンナDistorted Humor京浜盃
ブラウンラチェット2022フォエヴァーダーリングUSACongratsアルテミスS-G3
マジックサンズ2022コナブリュワーズキングカメハメハ札幌2歳S-G3
リラエンブレム2022デルフィニアUIREGalileoシンザン記念-G3
レーゼドラマ2022シアードラマUSABurning RomaフラワーC-G3

 ○ステレンボッシュは昨年の大一番で強さを示したエピファネイアの産駒。現役時キズナのライバルであったエピファネイアは産駒のG1勝利数ではキズナの倍以上となる11に達している。キズナとエピファネイアの産駒のワンツーはそう頻繁にはないが、希少というほど少ないわけでもないというもので、G1では2021年有馬記念-G1のエフフォーリアとディープボンド、2024年東京優駿-G1のダノンデサイルとジャスティンミラノの2例があり、ワンツーで決まるならエピファネイア産駒が勝っているので、逆転もあるかも。

 ディープインパクト産駒連続G1勝利はオーギュストロダンのお陰で昨年まで継続。▲ジャスティンパレスは残された希望の星。

 先週末現在の種牡馬ランキング1、2位の差は約1億1400万円。△ベラジオオペラが連覇達成ならロードカナロアは再逆転でリーディングへ。

 △ソールオリエンスの父キタサンブラックはこのレースのG1昇格第1回の勝ち馬。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2025.4.6
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