2025天皇賞・春


つなげG1連続勝利記録

 ディープインパクトの初年度産駒が3歳を迎えたのが2011年。その年の桜花賞-G1をマルセリーナが勝ったのを嚆矢として同産駒は日仏首豪港英愛米で毎年G1を勝ち続け、下表の通り内外で合計104を数えた。日本でのG1連続勝利記録が途絶えた昨年もオーギュストロダンが英国でプリンスオブウェールズS-G1に勝ってグローバルな記録はめでたく継続されることとなった。そもそもJRAG1などという格付けは公式には存在しないのだから、G1勝ちならどこで勝とうとG1勝ちと数えればいいだけのことだ。ディープインパクトのラストクロップは2020年生まれが海外にオーギュストロダンをはじめ6頭いたが、どれも既に現役ではないようで、日本で血統登録を受けた7頭も、そのうち今もJRAで現役なのはオープンファイアとスイープアワーズの2頭だけになった。最後から2世代目は現6歳。日本で109頭が血統登録を受け25頭がJRAに現役として在籍している。そのうちの2頭がここに出走して、連続年度G1勝利の記録の継続が期待できるのは6、7歳世代3頭のほかにはもうわずかしかいないだろう。
 一昨年の勝ち馬◎ジャスティンパレスは半兄パレスマリスが米三冠競走最長距離である12FのベルモントS-G1に勝った。そのほかのメトロポリタンH-G1などでより強い勝ち方を示していたので、マイルから9Fあたりがベストではあったろうし、種牡馬としてもNHKマイルC-G1のジャンタルマンタルやブリーダーズCジュヴェナイルターフ-G1のストラクターらを出しているようにマイラーの傾向が強いことは強い。母のパレスルーマーはシアトリカル系のステイヤー・ロイヤルアンセムの娘で、芝6F〜8.5Fで5勝。うち8.5Fのレースがオーデュボンオークスという上級ステークスだった。1歳時のセリでの価格は5000ドルに過ぎなかったのが、息子がベルモントS-G1に勝った年の11月のセリでは吉田勝己氏に110万ドルで落札されるまでになった。輸入後にオルフェーヴルとの交配で生まれたアイアンバローズはステイヤーズS-G2など5勝を挙げ、阪神大賞典-G2とステイヤーズS-G2で2着のあるステイヤーだった。父がディープインパクトに替わった弟の本馬は天皇賞(秋)-G1で「イクイノックスの」2着があるほどだから、兄パレスマリス同様、最大のタイトルよりは実際にはスピード寄りといえるが、その推測もこのレースに勝った事実を超えるものではない。3代母ステラーアフェアの孫にハリウッドゴールドC-G1のレイルトリップがいる牝系で、祖母がダマスカス3×4になっているあたりがディープインパクトとの配合で面白い仕掛けであるのかも。


ディープインパクト14年間のG1勝ち鞍104
2011桜花賞(マルセリーナ)、安田記念(リアルインパクト)、阪神JF(ジョワドヴィーヴル)
2012桜花賞(ジェンティルドンナ)、仏1000ギニー(Beauty Parlour)、優駿牝馬(ジェンティルドンナ)、東京優駿(ディープブリランテ)、秋華賞(ジェンティルドンナ)、ジャパンC(ジェンティルドンナ)
2013桜花賞(アユサン)、ヴィクトリアM(ヴィルシーナ)、東京優駿(キズナ)、マイルChp(トーセンラー)、ジャパンC(ジェンティルドンナ)
2014ドバイSC(ジェンティルドンナ)、桜花賞(ハープスター)、NHKマイルC(ミッキーアイル)、ヴィクトリアM(ヴィルシーナ)、秋華賞(ショウナンパンドラ)、天皇賞(秋)(スピルバーグ)、エ女王杯(ラキシス)、マイルChp(ダノンシャーク)、阪神JF(ショウナンアデラ)、朝日杯FS(ダノンプラチナ)、有馬記念(ジェンティルドンナ)
2015ジョージライダーS(リアルインパクト)、優駿牝馬(ミッキークイーン)、秋華賞(ミッキークイーン)、エ女王杯(マリアライト)、ジャパンC(ショウナンパンドラ)、香港カップ(エイシンヒカリ)
2016ドバイターフ(リアルスティール)、皐月賞(ディーマジェスティ)、優駿牝馬(シンハライト)、イスパーン賞(エイシンヒカリ)、東京優駿(マカヒキ)、宝塚記念(マリアライト)、秋華賞(ヴィブロス)、菊花賞(サトノダイヤモンド)、マイルChp(ミッキーアイル)、朝日杯FS(サトノアレス)、有馬記念(サトノダイヤモンド)
2017ドバイターフ(ヴィブロス)、皐月賞(アルアイン)、安田記念(サトノアラジン)、トゥーラクH(トーセンスターダム)、レーシングポストT(Saxon Warrior)、エミレーツS(トーセンスターダム)、朝日杯FS(ダノンプレミアム)
2018英2000ギニー(Saxon Warrior)、NHKマイルC(ケイアイノーテック)、ヴィクトリアM(ジュールポレール)、東京優駿(ワグネリアン)、ジョッキークラブ賞(Study of Man)、菊花賞(フィエールマン)、阪神JF(ダノンファンタジー)
2019大阪杯(アルアイン)、桜花賞(グランアレグリア)、天皇賞(春)(フィエールマン)、優駿牝馬(ラヴズオンリーユー)、東京優駿(ロジャーバローズ)、トゥーラクH(Fierce Impact)、菊花賞(ワールドプレミア)、カンタラS(Fierce Impact)、香港ヴァーズ(グローリーヴェイズ)、ホープフルS(コントレイル)
2020皐月賞(コントレイル)、天皇賞(春)(フィエールマン)、東京優駿(コントレイル)、安田記念(グランアレグリア)、ディアヌ賞(Fancy Blue)、英ナッソーS(Fancy Blue)、マカイビーディーヴァS(Fierce Impact)、スプリンターズS(グランアレグリア)、菊花賞(コントレイル)、マイルChp(グランアレグリア)
2021大阪杯(レイパパレ)、QEII世C(ラヴズオンリーユー)、天皇賞(春)(ワールドプレミア)、ヴィクトリアM(グランアレグリア)、東京優駿(シャフリヤール)、英オークス(Snowfall)、安田記念(ダノンキングリー)、愛オークス(Snowfall)、ヨークシャーオークス(Snowfall)、スプリングチャンピオン(Profondo)、秋華賞(アカイトリノムスメ)、BCフィリー&メアターフ(ラヴズオンリーユー)、マイルChp(グランアレグリア)、ジャパンC(コントレイル)、香港ヴァーズ(グローリーヴェイズ)、香港カップ(ラヴズオンリーユー)、ホープフルS(キラーアビリティ)
2022ドバイSC(シャフリヤール)、大阪杯(ポタジェ)、オーストラレイシアンオークス(Glint of Hope)、英フューチュリティT(Auguste Rodin)、菊花賞(アスクビクターモア)
2023天皇賞(春)(ジャスティンパレス)、英ダービー(Auguste Rodin)、愛ダービー(Auguste Rodin)、愛チャンピオンS(Auguste Rodin)、BCターフ(Auguste Rodin)
2024プリンスオブウェールズS(Auguste Rodin)

 ○ビザンチンドリームは昨年の菊花賞-G1でようやくこの馬らしい末脚を発揮し、G2のハンデ戦とはいえ60kgを背負ってレッドシーターフH-G2に快勝したのは立派。同い年のエピファネイア産駒には日本ダービー馬でドバイシーマクラシック-G1を楽勝したダノンデサイルもいて、エピファネイア産駒の新たな強さを示しているようにも見える。また皐月賞-G1をリオンディーズ産駒ミュージアムマイルが勝ったように、種牡馬としてのシーザリオの息子のブームが昨年から継続しているともいえる。3代母フサイチエアデールは4歳牝馬特別(西)、シンザン記念、ダービー卿チャレンジT、マーメイドSなど5勝を挙げ、産駒に朝日杯フューチュリティSのフサイチリシャール、クイーンCのライラプスらを送り、ミスタープロスペクター直仔の4代母ラスティックベルの子孫には有馬記念-G1などG1・4勝のクロノジェネシス、香港カップ-G1のノームコアがいる。

 このレースの最多勝は4勝でサンデーサイレンスUSA、ディープインパクト、そしてステイゴールドが並ぶ。ステイゴールドの後継種牡馬ゴールドシップは自身このレースで3戦1勝5着1回7着1回。父仔制覇がかかる▲マイネルエンペラーは優駿牝馬-G1のユーバーレーベンの全弟で、新潟記念-G3のマイネルファンロンの半弟。祖母マイネヌーヴェルはフラワーCに勝ち、産駒マイネルグロンは中山大障害に勝った。3代母の産駒マイネルネオスは中山グランドジャンプ、同マイネルチャールズは弥生賞に、同マイネルアワグラスはシリウスS-G3に勝った。この父と母の父の組み合わせは別の牝系からもクイーンS-G3のコガネノソラが出ていて、岡田家の見立て通りの相性の良さを示している。

 △シュヴァリエローズは母の父がカーリアン後継なので、父の初年度産駒ダノンシャークを思い出させる。△ショウナンラプンタは天皇賞にミスマッチなストームキャット3×4が逆に不気味。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2025.5.4
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