1986年秋の天皇賞をレコード勝ちしたサクラユタカオーと、春の天皇賞馬アンバーシャダイの全妹サクラハゴロモの間に生まれたサクラバクシンオーは1992年1月12日、中山のダート1200mでデビューし、2着馬に5馬身の差をつけて勝った。3歳時は11戦してクリスタルCを含め5勝。4歳前半を休養に充て、10月に復帰すると当時暮れに行われていたスプリンターズSまで4戦3勝の成績を残した。5歳時は4月にダービー卿チャレンジTに勝ち、安田記念では4角先頭から伸びを欠き4着。秋は毎日王冠で逃げて4着となり、ネーハイシーザーのレコード勝ちのお膳立てをした。続くスワンSではノースフライトの追撃を抑えて1400m1:19.9のJRAレコードという実質的日本レコードで勝った。マイルチャンピオンシップでは距離もあってノースフライトの反撃に屈して2着となったが、スプリンターズSでは1:07.1のJRAレコードという日本レコードで2着のビコーペガサスに4馬身差をつけて圧勝した。30年もたつと最後の3戦に強烈な印象が残るばかりだが、改めて全成績を振り返ると3歳時のスプリンターズSのみで崩れたが、1200m以下で8戦7勝、1400m以下では12戦11勝というほぼ完璧なスプリンター像がよみがえる。種牡馬となったサクラバクシンオーは1996年から2012年までの間に生まれた産駒のうち1568頭が血統登録され、28頭が47の平地重賞に勝った。下表はそのうち1400m以下の重賞勝ち産駒と娘の産駒を挙げた。短距離に絞ったので、グランプリボスの朝日杯フューチュリティS-G1や娘の産駒キタサンブラックが漏れることになってしまったが、それでも結構な数ですね。 |
サクラバクシンオ
ー産駒と娘の仔の スプリント重賞勝ち鞍(1400m以下) | |||
直仔 | 生年 | 性 | 主な勝ち鞍 |
ショウナンカンプ | 1998 | 牡 | 高松宮記念、スワンS、阪急杯 |
ブルーショットガン | 1999 | 牡 | 阪急杯 |
シーイズトウショウ | 2000 | 牝 | セントウルS、CBC賞×2、函館スプリントS×2 |
ジョイフルハート | 2001 | 牡 | 北海道スプリントC |
タイセイブレーヴ | 2001 | 牡 | 兵庫ジュニアグランプリ |
デンシャミチ | 2003 | 牡 | 京王杯2歳S |
サンダルフォン | 2003 | 牡 | 北九州記念-G3 |
タイセイアトム | 2003 | 牡 | ガーネットS-G3 |
カノヤザクラ | 2004 | 牝 | セントウルS-G2、アイビスサマーダッシュ-G3、アイビスSD |
ヘッドライナー | 2004 | せん | CBC賞-G3 |
アドマイヤホクト | 2004 | 牡 | ファルコンS |
ニシノチャーミー | 2004 | 牝 | 函館2歳S |
サンクスノート | 2005 | 牝 | 京王杯スプリングC-G2 |
マルブツイースター | 2005 | 牡 | 小倉2歳S |
スプリングソング | 2005 | 牡 | 京阪杯-G3 |
ダッシャーゴーゴー | 2007 | 牡 | セントウルS-G2、オーシャンS-G3、CBC賞-G3 |
エーシンホワイティ | 2007 | 牡 | ファルコンS-G3 |
グランプリボス | 2008 | 牡 | スワンS-G2、京王杯2歳S-G2 |
スギノエンデバー | 2008 | 牡 | 北九州記念-G3 |
テイクアベット | 2008 | 牡 | サマーチャンピオン |
ゴーイングパワー | 2009 | 牡 | 兵庫ジュニアグランプリ |
バクシンテイオー | 2009 | 牡 | 北九州記念-G3 |
ビッグアーサー | 2011 | 牡 | 高松宮記念-G1、セントウルS-G2 |
ベルカント | 2011 | 牝 | フィリーズレビュー-G2、アイビスサマーダッシュ-G3×2、 北九州記念-G3、ファンタジーS-G3 |
娘の産駒 | 生年 | 性 | 主な勝ち鞍 |
ハクサンムーン | 2009 | 牡 | セントウルS-G2、京阪杯-G3、アイビスサマーダッシュ-G3 |
キタサンミカヅキ | 2010 | 牡 | 東京盃×2、東京スプリント |
ブランボヌール | 2013 | 牝 | 函館2歳S-G3、キーンランドC-G3 |
モンドキャンノ | 2014 | 牡 | 京王杯2歳S-G2 |
ファストフォース | 2016 | 牡 | 高松宮記念-G1、CBC賞-G3 |
ビアンフェ | 2017 | せん | 函館2歳S-G3、函館スプリントS-G3 |
テイエムトッキュウ | 2018 | 牡 | カペラS-G3 |
サトノレーヴ | 2019 | 牡 | 函館スプリントS-G3、キーンランドC-G3 |
G1勝ち馬3頭は、グランプリボスが小倉記念-G3のモズナガレボシとエーデルワイス賞のモズミギカタアガリを、ショウナンカンプはニュージーランドT-G2のショウナンアチーヴとCBC賞-G3のラブカンプーを送り、ビッグシーザーは函館2歳S-G3のブトンドールとセントウルS-G2の◎トウシンマカオを出した。テスコボーイGBに発した内国産父系はサクラユタカオーを起点とすると40年、3代にわたって続いてきたことになるが、そろそろ望まれるのは3代目のG1勝ち。父のビッグアーサーは4歳時にも条件戦の4連勝があったが、5歳3月に高松宮記念-G1をレコード勝ち。スプリンターながら晩成型の面がある父系なので、5歳秋を迎えた今回は大きなチャンス。スペシャルウィーク産駒の母ユキノマーメイドは芝1800m〜2000mで4勝を挙げた中距離馬で、米国産の祖母サスペンスクイーンUSAは芝1000m〜1200mで3勝を挙げたスプリンター。その父はウッドマンなので、父の母の父キングマンボとともに日本向きのミスタープロスペクター4×4を構成することになる。4代母ローズボウルは英チャンピオンS-G1、クイーンエリザベス2世S-G2などに勝った名牝で、5代母ロゼリエールの産駒にはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1のイルドブルボンUSAがいる欧州牝系。ミスタープロスペクターとサンデーサイレンスUSAでパワフルな現代的武装を施されてアップデートした日本在来父系といえる。 サクラバクシンオーの母の父としての優秀さはキタサンブラックが代表して示す通りで、テスコボーイGB×ノーザンテーストCANという高級ブルードメアサイアー同士の組み合わせが奏功している。○サトノレーヴはロードカナロア×サクラバクシンオーだから新旧チャンピオンスプリンターの合作であり、ロードカナロアの連勝をストップしたハクサンムーンの半弟という因縁も備えた血統。ロードカナロアはデビューから4戦目から5連勝、スプリンターズSG1から安田記念G1まで5連勝、ハクサンムーンに負けたあともG1連勝で現役生活を終えた。その仔も連勝中は逆らうべきではないだろう。 ▲オオバンブルマイは血統表中に祖母の父としてサクラバクシンオーが潜む。ディープインパクトとストームキャット牝馬のニックスは定評のあるところなので、それを天地逆にしたストームキャット系種牡馬とディープインパクト牝馬の組み合わせ。その威力はオーストラリアのグレード外の5億円レース、ザ・ゴールデンイーグルを制した勝負強さにつながっているようだ。3代母アジアンミーティアUSAは米国の大種牡馬アンブライドルズソングの全妹で、ファルコンS-G3・3着の祖母の産駒にはキーンランドC-G3のブランボヌール、函館スプリントS-G3のビアンフェ、フォレ賞-G13着のエントシャイデンらがいる。 △ビクターザウィナーは豪州でスプリンターに変貌することもあるサドラーズウェルズ系。△ママコチャは白毛の名門から出た鹿毛だが、父の産駒は本馬を含めスプリントG1に4勝を挙げる。 |
競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2024.9.29
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