2024秋華賞


サンデーサイレンスUSAの新しい局面

 1996年に始まった秋華賞はサンデーサイレンスUSAが攻略に苦労したレースで、初めて連対を果たしたのが2001年のローズバドで延べ24頭目の出走、初勝利は2003年スティルインラブで延べ33頭目の出走だった。その後は2005年にエアメサイアが勝って、直仔は通算で52戦2勝2着2回3着1回という結果だった。これがディープインパクトの代になると2012年に2年目の産駒ジェンティルドンナが勝ち、下表にあるように2014年から2016年まで3連覇、2021年にも勝って47戦5勝2着5回3着2回の成績を残した。そのような孫の代の活躍は近年になって徐々に変化し、サンデーサイレンスUSAの名が見えるのは血統表の3代目の位置というケースが多くなった。時間が経つにしたがってサンデーサイレンスUSAの存在が遠くなり、反対に多くの馬の血統表中に遍在といえるほどになってくるのはこのレースに限らず時間の経過につれての自然な現象だが、サンデーサイレンスUSA=苦手、ディープインパクト=得意と父仔で傾向を分けたこのレースゆえに今後を占うアンテナ的な性格も備えている可能性がある。


サンデーサイレンスUSAの影響力に経年変化が見えるか?
年度
馬名3代前までに配合された種牡馬(太字はサンデーサイレンスUSA系)サンデーサイ
レンスの位置
人気単勝
オッズ
母の父祖母の父
20141ショウナンパンドラディープインパクトフレンチデピュティUSAディクタスFR父系祖父2310.1
2ヌーヴォレコルトハーツクライスピニングワールドUSAChief's Crown父系祖父211.5
3タガノエトワールキングカメハメハサンデーサイレンスUSAトニービンIRE母の父2417.9
20151ミッキークイーンディープインパクトGold AwayProcida父系祖父213.0
2クイーンズリングマンハッタンカフェAnabaaBering父系祖父2514.9
3マキシマムドパリキングカメハメハサンデーサイレンスUSAHighest Honor母の父2830.7
20161ヴィブロスディープインパクトMachiavellianNureyev父系祖父236.3
2パールコードヴィクトワールピサLost CodeFlying Paster父系曽祖父3413.7
3カイザーバルエンパイアメーカーUSAサンデーサイレンスUSANijinsky母の父2821.2
20171ディアドラハービンジャーGBスペシャルウィークMachiavellian母の父の父336.3
2リスグラシューハーツクライAmerican PostミラーズメイトGB父系祖父247.0
3モズカッチャンハービンジャーGBキングカメハメハStorm Bootなし 58.6
20181アーモンドアイロードカナロアサンデーサイレンスUSANureyev母の父211.3
2ミッキーチャームディープインパクトDansiliDominion父系祖父2515.6
3カンタービレディープインパクトGalileoラストタイクーンIRE父系祖父2314.0
20191クロノジェネシスバゴFRクロフネUSAサンデーサイレンスUSA祖母の父346.9
2カレンブーケドールディープインパクトScat DaddySeeker's Reward父系祖父225.6
3シゲルピンクダイヤダイワメジャーHigh ChaparralSinndar父系祖父21027.0
20201デアリングタクトエピファネイアキングカメハメハサンデーサイレンスUSAインブリード4×311.4
2マジックキャッスルディープインパクトシンボリクリスエスUSAFairy King父系祖父21056.9
3ソフトフルートディープインパクトKingmamboSummer Squall父系祖父2954.7
20211アカイトリノムスメディープインパクトキングカメハメハSalt Lake父系祖父248.9
2ファインルージュキズナボストンハーバーUSAダンスインザダークインブリード3×425.6
3アンドヴァラナウトキングカメハメハディープインパクトトニービンIRE母の父の父337.3
20221スタニングローズキングカメハメハクロフネUSAサンデーサイレンスUSA祖母の父335.7
2ナミュールハービンジャーGBダイワメジャーフレンチデピュティUSA母の父の父323.3
3スターズオンアースドゥラメンテSmart StrikeMonsun父の母の父313.0
20231リバティアイランドドゥラメンテAll AmericanザールGB父の母の父311.1
2マスクトディーヴァルーラーシップディープインパクトホワイトマズルGB母の父の父3313.0
3ハーパーハーツクライJump StartCarson City父系祖父2212.9

 今回の出走馬15頭のうちサンデーサイレンスUSAの血を含まないのはセキトバイーストだけで、あとは全馬何らかの形でその血を受けている。最大派閥は父系直系で、これが7頭。そのうち孫のボンドガールを除く6頭が直系曽孫ということになる。ところで、今年のサイアーランキングではベスト10のうちサンデーサイレンスUSA直系は首位のキズナだけ(JBISサーチ、10月8日現在)という事態になっている。これをキズナ一人勝ちといっていいのかどうか分からないが、今年は牡馬クラシックも制したことで、質量ともに充実期に入ったのは間違いのないところ。◎クイーンズウォークは桜花賞-G1の0秒6差8着、優駿牝馬-G1の0秒4差4着から秋を迎えてローズS-G2で2度目の重賞勝ちを収めて順調な成長を示している。母ウェイヴェルアベニューCANは4歳時にブリーダーズCフィリー&メアスプリント-G1を豪快に差し切って勝ち、翌年の同レースでも2着となったスプリンター。地味な牝系から突如現れた一流馬で、その父ハーリントンはガルフストリームパークH-G2に勝った程度だが、大種牡馬アンブライドルド×名牝セリーナズソングという良血がこの1頭だけに大きな成果をもたらしたという形になる。サンデーサイレンスUSA系×アンブライドルド系の現代的な成功パターンにストームキャットとシルヴァーデピュティの米国型スピードも入っているだけに内回り2000mにも対応可能だろう。

 もう1頭のキズナ産駒○タガノエルピーダはデビュー2戦目の朝日杯フューチュリティS-G1で牡馬相手に3着となった点がもっと評価されてもいいと思うが、忘れな草賞Lを勝って臨んだ優駿牝馬-G1でも6番人気にしかならなかったあたりはそういう個性というほかない(負けてるし)。母のキングカメハメハ×トニービンIREの構成はG1向きといえるし、4代母ライクリーイクスチェインジの子孫からはエリザベス女王杯のトゥザヴィクトリーやシュヴィーH-G1のクリアマンデイト、ジャパンC-G12着のデニムアンドルビーら多くの活躍馬が出る。

 ▲ステレンボッシュは三冠牝馬デアリングタクト同様サンデーサイレンスUSAの近交となるエピファネイア産駒。エピファネイアはサンデーサイレンスUSAが遠くにあることで配合上の自由度が上がるのが強みともいえるが、産駒がG1に4勝した上半期の勢いをキープできていれば本馬のチャンスも続く。

 秋に急成長を示すものが多いハービンジャーGB産駒ながら、△チェルヴィニアは春に結果を出した。母チェッキーノはフローラS-G2に勝ち優駿牝馬-G12着のあと順調さを欠いたが、祖母が京都牝馬S勝ちのハッピーパス、3代母ハッピートレイルズIREの産駒にマイルチャンピオンシップのシンコウラブリイIREがいる牝系ならば成長力に期待できる。

 △ホーエリートは祖父母の代にキングカメハメハ、エアグルーヴ、ステイゴールドが並ぶ。祖母の父クロフネUSAも機動力を補強。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2024.10.13
©Keiba Book