2024有馬記念


師走のロベルト狙いパート2

 有馬記念最多勝種牡馬はサンデーサイレンスUSAで5勝。2位はステイゴールド4勝。勝ち鞍順ベストテン内にハーツクライ2勝、ディープインパクト2勝と、サンデーサイレンスUSAとその直仔が4頭を占める。次の勢力が3勝のブライアンズタイムUSA、2勝のシルヴァーホークとクリスエスが属するロベルト系ということになる。下表にロベルト系の有馬記念での全成績を示した。サンデーサイレンスUSA系より出走数が少ない割に上位に入る馬が多いことと、シルクジャスティスやグラスワンダーUSAに象徴されるようにサンデーサイレンスUSA系への対抗勢力というイメージが強く、全体としても勝率0.180、3着内率0.260ならまあまあ優秀な数字なのではないか。そういうわけで先週に続いてのロベルト狙いとなる。今回はエピファネイア産駒が2頭。エピファネイア産駒の攻勢にあるときの強さと勢い、退潮に向かったときの立ち直りにくさはロベルト系の特徴を極端に示していて分かりやすいといえば分かりやすく、かといって安易に決めつけにくい部分もある。最近は6歳で重賞初制覇を果たしてしかもそれがG1というテンハッピーローズのようなこれまでにない個性を示す産駒も出てきた。
 ◎ダノンデサイルの菊花賞-G1は0秒7差6着だからその結果だけを見れば日本ダービー馬としては完敗というべきだが、当事者目線で見れば妨害につぐ妨害にもめげず外を回って勝ち馬を凌ぐ上がりの脚を使って差を詰めてはいるわけなので、負けて強しの内容。これをもって上半期の勢いを失ったと見るのは早計だろう。父のエピファネイアも4歳時は大阪杯-G13着、クイーンエリザベス2世カップ-G14着、天皇賞(秋)-G16着とじりじり着順を下げていってから反発を見せてのジャパンカップ-G1圧勝だった。母のトップデサイルUSAは2歳時にアルシバイアディーズS-G1とブリーダーズカップジュヴェナイルフィリーズ-G1を2戦続けて1/2馬身差で惜敗。その後は3歳10月に一般戦をひとつ勝ち、通算9戦2勝2着2回で引退した。その父コングラツはサンパスカルH-G2に勝ちサンタアニタH-G1で2着となった程度だが、さすがエーピーインディ直仔で名門ラトロワンヌ系出身のエリート血統というべきか、種牡馬としてはウィキッドリーパーフェクトUSAやハヴユーゴーンアウェイUSAらのG1勝ち牝馬を送って成功し、フィリーサイアーだったこともあって母の父としてそれを上回る成功を収めつつあり、特に今年はヨハネスがシューメーカーマイル-G1など重賞4勝、マリキンがフォアゴーS-G1など重賞2勝と大活躍し、日本でも本馬のほかフォーエバーヤング、ブラウンラチェットが成果を上げた。ロベルト4×5、シアトルスルー4×5に加えコングラツの母の父ミスタープロスペクターと祖母の父フォレストリーはシアトルスルーと同じ牝系出身という凝った配合でもあり、ここから出直して再びの快進撃があるかもしれない。


有馬記念におけるロベルト系のすべて
種牡馬名 (父系)産駒の着順(年度)
 1着  2着  3着  着外 
ブライアンズタイムUSA (父Roberto)
30010[1]ナリタブライアン(1994)[1]マヤノトップガン(1995)[1]シルクジャスティス(1997)、[4]ナリタブライアン(1995)、[5]スカイディグニティ(2012)、[6]ノーリーズン(2002)、[7]マヤノトップガン(1996)、[7]シルクジャスティス(1998)、[8]チョウカイキャロル(1994)、[8]ファレノプシス(1999)、[13]ビッグゴールド(2005)、[14]トーホウシデン(2000)、[15]マイネルマックス(1997)
Silver Hawk (父Roberto)
2001[1]グラスワンダーUSA(1998)[1]グラスワンダーUSA(1999)、[7]シンコウカリド(2001)
Kris S. (父Roberto)
2001[1]シンボリクリスエスUSA(2002)[1]シンボリクリスエスUSA(2003)、[10]マチカネアレグロUSA(1994)
スクリーンヒーロー (父グラスワンダーUSA…祖父Silver Hawk…曽祖父Roberto)
1111[1]ゴールドアクター(2015)、[2]ボルドグフーシュ(2022)、[3]ゴールドアクター(2016)、[7]ウインマリリン(2023)
エピファネイア (父シンボリクリスエスUSA…祖父Kris S.…曾祖父Roberto)
1004[1]エフフォーリア(2021)、[4]イズジョーノキセキ(2022)、[5]エフフォーリア(2022)、[6]アリストテレス(2021)、[14]アリストテレス(2022)
リアルシャダイUSA (父Roberto)
00110[3]ライスシャワー(1994)、[5]オースミシャダイ(1990)、[7]ムッシュシェクル(1994)、[8]ライスシャワー(1992)、[8]ライスシャワー(1993)、[8]ダイワオーシュウ(1998)、[11]リアルバースデー(1990)、[12]ダイワオーシュウ(1999)、[14]サンライズフラッグ(1998)、[15]オースミシャダイ(1991)、[16]リアルバースデー(1989)
モーリス (父スクリーンヒーロー…祖父グラスワンダーUSA…曾祖父Silver Hawk…高祖父Roberto)
0010[3]ジェラルディーナ(2022)
グラスワンダーUSA (父Silver Hawk…祖父Roberto)
0004[5]スクリーンヒーロー(2008)、[6]セイウンワンダー(2009)、[10]アーネストリー(2011)、[11]アーネストリー(2012)
マヤノトップガン (父ブライアンズタイムUSA…祖父Roberto)
0003[7]チャクラ(2003)、[13]キングトップガン(2011)、[14]ムスカテール(2016)
シンボリクリスエスUSA (父Kris S.…祖父Roberto)
0001[5]エピファネイア(2014)
タニノギムレット (父ブライアンズタイムUSA…祖父Roberto)
0001[11]ウオッカ(2007)
Red Ransome (父Roberto)
0001[4]ロックドゥカンブNZ(2007)

 ○プログノーシスは香港でアジア最強馬ロマンチックウォリアーIREの2着となり、オーストラリアでは現在実質的な世界ランキング首位のヴィアシスティーナの2着となった。ディープインパクト産駒の実力馬が国際的苦労人の立場のままで終わるとも思えず、最後のチャンスで14年連続国内G1勝利を達成(国内に限らなければオーギュストロダンのお陰でG1勝ちは継続された)するような華やかな結果が似合う。

 ▲ドウデュース2歳から5歳まで毎年G1勝ちを重ねて5勝。リスグラシュー、スワーヴリチャード、ジャスタウェイなど5歳でピークに達したハーツクライ産駒は多いが、もう既にそれらを上回る実績を築いた。4歳時でも勝っているのだから、5歳の今年はそれ以上のパフォーマンスを期待できるのかもしれない。(出走取消)

 △ローシャムパークは3代母がエアグルーヴ。1997年の有馬記念では直線でタイキブリザードUSAを抜き去って堂々先頭に立ったところをマーベラスサンデー、次いでシルクジャスティスの強襲に遭ったが、あれは強い競馬だったなあ。その名牝にサンデーサイレンスUSA、キングカメハメハと配合された母レネットグルーヴに、今年は優駿牝馬-G1のチェルヴィニア、阪神ジュベナイルフィリーズ-G1のアルマヴェローチェを送って好調のハービンジャーGBが父。2018年の勝ち馬ブラストワンピースによく似たパターンでもある。

 △シャフリヤールは3代母の父ヒズマジェスティの血に期待。


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