2023阪神ジュベナイルフィリーズ


ダイワメジャーの本領

 今年の十大ニュースにも重大ニュースにもならないトピックとして、小欄としてはダイワメジャー産駒ダブルメイジャーがフランスでショードネイ賞-G2とロイヤルオーク賞-G1を連勝した件を挙げておきたい。それぞれ距離は3000mと3100mの超長距離。ダイワメジャー産駒にはダイヤモンドS-G3・3着のメイショウカドマツ、ステイヤーズS-G2・3着のプレストウィック、阪神大賞典-G2・3着のロードヴァンドールらの長距離走者が例外的にいたことはいたが、G1勝ちに至ったのはこれが初めて。種牡馬引退にあたっての鬼っ子の出現であるのか、大種牡馬の余技なのかは分からないが、マキアヴェリアンが4000mのカドラン賞-G1の勝ち馬を出したり、サドラーズウェルズ系からスプリンターが出たり、距離適性という一面を見るだけでもこういったことはよくあり、ときどき「変わった子」が現れることは生き物の生き残りの戦略の基本のひとつなのだろう。そうはいっても、ダイワメジャーといえば早熟の天才マイラーを送り出すことがお家芸の第一であることは疑う余地がない。下表に示したダイワメジャー産駒によるG1級入着一覧における芝1600mの割合は37分の24で全G1級入着の64%に及ぶ。特に阪神ジュベナイルフィリーズ-G1、朝日杯フューチュリティS-G1、桜花賞-G1、NHKマイルC-G1の世代限定戦はそのうちの17を占め、世代混合戦だったアドマイヤメジャーの香港マイル-G1、セリフォスのマイルチャンピオンシップ-G1も3歳時での勝利だった。ダイワメジャーの種付頭数はこの2歳=2020年種付世代までは112の3桁を維持していたが、2021年(種付)は51頭、2022年34頭、2023年12頭と減少しており、フルボリュームの戦力が見込めるのは一応この世代までということはいえるので、ここから来年の3歳マイル戦線がダイワメジャー産駒最後の総力戦となろうことは推測できる。
 ◎アスコリピチェーノは新潟2歳S-G3勝ち馬。父の産駒で同競走に勝ったものは2017年のフロンティア、2021年のセリフォスに次いで3頭目。母の父がデインヒルダンサーだから、既にブルドッグボス(母の父デインヒルUSA)、ダブルメイジャー(母の父ダンシリの父がデインヒルUSA)で成功の道筋が示されている。祖母のリッスンIREはサドラーズウェルズ産駒で、2歳牝馬のフィリーズマイル-G1に勝ち、産駒にローズS-G2のタッチングスピーチ、菊花賞-G1・2着のサトノルークス、東京スポーツ杯2歳S-G3・3着のムーヴザワールドがおり、孫のキングズレインはホープフルS-G1で3着となった。3代母ブリジッドの産駒には2歳牝馬のモイグレアスタッドS-G1勝ち馬セコイヤ、孫に英2000ギニー-G1、サセックスS-G1など英愛でマイルG1に4勝を挙げたヘンリーザナヴィゲイター、曽孫にはBCターフ-G1のマジシャンがいる。母のデインヒルUSAとサドラーズウェルズの組み合わせは英愛血統の典型的パターンのひとつであり、例えば英2000ギニー-G1のサクソンウォリアーがディープインパクト×ガリレオ×デインヒルUSAだったように、ここにサンデーサイレンスUSAの血を導入することが英愛血統の閉塞感打破のひとつの解となっている。


信頼と実績のダイワメジャー〜そのG1級競走産駒入着一覧
馬名生年母の父年度競走名距離着順
カレンブラックヒル2009Grindstone2012NHKマイルC16001
ダイワマッジョーレ2009Law Society2013マイルチャンピオンシップ16002
メジャーアスリート2009Storm Cat2011全日本2歳優駿LRダ16002
コパノリチャード2010トニービンIRE2014高松宮記念12001
フラムドグロワール2010ブライアンズタイムUSA2013NHKマイルC16003
プリンセスジャック2010アフリートCAN2013桜花賞16003
ブルドッグボス2012デインヒルUSA2017JBCスプリントLRダ12003
2019JBCスプリントLRダ14001
2020JBCスプリントLRダ12003
ソルヴェイグ2013ジャングルポケット2016スプリンターズS12003
ナックビーナス2013More Than Ready2018高松宮記念12003
メジャーエンブレム2013オペラハウスGB2015阪神ジュベナイルフィリーズ16001
2016NHKマイルC16001
ボンセルヴィーソ2014サクラローレル2016朝日杯フューチュリティS16003
2017NHKマイルC16003
レーヌミノル2014タイキシャトルUSA2016阪神ジュベナイルフィリーズ16003
2017桜花賞16001
アドマイヤマーズ2016Medicean2018朝日杯フューチュリティS16001
2019NHKマイルC16001
2019香港マイル16001
2020マイルチャンピオンシップ16003
2020香港マイル16003
シゲルピンクダイヤ2016High Chaparral2019桜花賞16002
2019秋華賞20003
ノーヴァレンダ2016クロフネUSA2018全日本2歳優駿Lダ16001
レシステンシア2017Lizard Island2019阪神ジュベナイルフィリーズ16001
2020桜花賞16002
2020NHKマイルC16002
2021高松宮記念12002
2021スプリンターズS12002
2021香港スプリント12002
2022ヴィクトリアマイル16003
セリフォス2019Le Havre2021朝日杯フューチュリティS16002
2022マイルチャンピオンシップ16001
2023安田記念16002
マテンロウオリオン2019キングカメハメハ2022NHKマイルC16002
Double Majorせん2020Dansili2023ロイヤルオーク賞31001
太字は芝1600mのG1勝利。ダイワメジャー産駒は芝1600bのGT(JRAのみ)で(8.7.7.88)で単勝回収率71.5%、
牝馬に限ると(4.3.3.47)で単勝回収率99.6%

 リバティアイランドにソウルスターリング、アパパネ、ブエナビスタ……。まず来年の優駿牝馬-G1勝ち馬を予想してこのレースの勝ち馬を探す手もある。○コラソンビートはファーストシーズンサイアーランキングの首位を行くスワーヴリチャードが父で母の父が三冠馬オルフェーヴル。ハーツクライとステイゴールド経由のサンデーサイレンスUSA3×4だからステイヤー色が濃く、3代母の産駒には香港ヴァーズ-G1のウインマリリンがいる。母の父としてのオルフェーヴルは昨年のホープフルS-G1勝ち馬ドゥラエレーデを送り、その父ステイゴールドよりひと足先にG1ブルードメアサイアーとなった。

 ▲サフィラは全兄サリオスが朝日杯フューチュリティS-G1勝ち馬。ハーツクライ産駒は3歳時に強くなり、停滞期を挟んで古馬になって更に強くなるケースが多いが、2歳戦実績もサリオスだけでなく、ドウデュースが朝日杯FS-G1に、タイムフライヤーがホープフルS-G1に勝っている。あと、このレースに勝てば2歳G1コンプリートとなる。

 △シカゴスティングは桜花賞馬マルセリーナの姪。父ロゴタイプは朝日杯FS-G1と皐月賞-G1、安田記念-G1に勝った。ローエングリン、シングスピールと遡る父系は日本で独自の発展を遂げたサドラーズウェルズ系ということで貴重。

 △ステレンボッシュはロベルト系×ミスタープロスペクター系のニックスの最新バージョンで、3代母はディープインパクトの母ウインドインハーヘア。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2023.12.10
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