今年の十大ニュースにも重大ニュースにもならないトピックとして、小欄としてはダイワメジャー産駒ダブルメイジャーがフランスでショードネイ賞-G2とロイヤルオーク賞-G1を連勝した件を挙げておきたい。それぞれ距離は3000mと3100mの超長距離。ダイワメジャー産駒にはダイヤモンドS-G3・3着のメイショウカドマツ、ステイヤーズS-G2・3着のプレストウィック、阪神大賞典-G2・3着のロードヴァンドールらの長距離走者が例外的にいたことはいたが、G1勝ちに至ったのはこれが初めて。種牡馬引退にあたっての鬼っ子の出現であるのか、大種牡馬の余技なのかは分からないが、マキアヴェリアンが4000mのカドラン賞-G1の勝ち馬を出したり、サドラーズウェルズ系からスプリンターが出たり、距離適性という一面を見るだけでもこういったことはよくあり、ときどき「変わった子」が現れることは生き物の生き残りの戦略の基本のひとつなのだろう。そうはいっても、ダイワメジャーといえば早熟の天才マイラーを送り出すことがお家芸の第一であることは疑う余地がない。下表に示したダイワメジャー産駒によるG1級入着一覧における芝1600mの割合は37分の24で全G1級入着の64%に及ぶ。特に阪神ジュベナイルフィリーズ-G1、朝日杯フューチュリティS-G1、桜花賞-G1、NHKマイルC-G1の世代限定戦はそのうちの17を占め、世代混合戦だったアドマイヤメジャーの香港マイル-G1、セリフォスのマイルチャンピオンシップ-G1も3歳時での勝利だった。ダイワメジャーの種付頭数はこの2歳=2020年種付世代までは112の3桁を維持していたが、2021年(種付)は51頭、2022年34頭、2023年12頭と減少しており、フルボリュームの戦力が見込めるのは一応この世代までということはいえるので、ここから来年の3歳マイル戦線がダイワメジャー産駒最後の総力戦となろうことは推測できる。 |
信頼と実績のダイワメジャー〜そのG1級競走産駒入着一覧 | |||||||
馬名 | 性 | 生年 | 母の父 | 年度 | 競走名 | 距離 | 着順 |
カレンブラックヒル | 牡 | 2009 | Grindstone | 2012 | NHKマイルC | 1600 | 1 |
ダイワマッジョーレ | 牡 | 2009 | Law Society | 2013 | マイルチャンピオンシップ | 1600 | 2 |
メジャーアスリート | 牡 | 2009 | Storm Cat | 2011 | 全日本2歳優駿LR | ダ1600 | 2 |
コパノリチャード | 牡 | 2010 | トニービンIRE | 2014 | 高松宮記念 | 1200 | 1 |
フラムドグロワール | 牡 | 2010 | ブライアンズタイムUSA | 2013 | NHKマイルC | 1600 | 3 |
プリンセスジャック | 牝 | 2010 | アフリートCAN | 2013 | 桜花賞 | 1600 | 3 |
ブルドッグボス | 牡 | 2012 | デインヒルUSA | 2017 | JBCスプリントLR | ダ1200 | 3 |
2019 | JBCスプリントLR | ダ1400 | 1 | ||||
2020 | JBCスプリントLR | ダ1200 | 3 | ||||
ソルヴェイグ | 牝 | 2013 | ジャングルポケット | 2016 | スプリンターズS | 1200 | 3 |
ナックビーナス | 牝 | 2013 | More Than Ready | 2018 | 高松宮記念 | 1200 | 3 |
メジャーエンブレム | 牝 | 2013 | オペラハウスGB | 2015 | 阪神ジュベナイルフィリーズ | 1600 | 1 |
2016 | NHKマイルC | 1600 | 1 | ||||
ボンセルヴィーソ | 牡 | 2014 | サクラローレル | 2016 | 朝日杯フューチュリティS | 1600 | 3 |
2017 | NHKマイルC | 1600 | 3 | ||||
レーヌミノル | 牝 | 2014 | タイキシャトルUSA | 2016 | 阪神ジュベナイルフィリーズ | 1600 | 3 |
2017 | 桜花賞 | 1600 | 1 | ||||
アドマイヤマーズ | 牡 | 2016 | Medicean | 2018 | 朝日杯フューチュリティS | 1600 | 1 |
2019 | NHKマイルC | 1600 | 1 | ||||
2019 | 香港マイル | 1600 | 1 | ||||
2020 | マイルチャンピオンシップ | 1600 | 3 | ||||
2020 | 香港マイル | 1600 | 3 | ||||
シゲルピンクダイヤ | 牝 | 2016 | High Chaparral | 2019 | 桜花賞 | 1600 | 2 |
2019 | 秋華賞 | 2000 | 3 | ||||
ノーヴァレンダ | 牡 | 2016 | クロフネUSA | 2018 | 全日本2歳優駿L | ダ1600 | 1 |
レシステンシア | 牝 | 2017 | Lizard Island | 2019 | 阪神ジュベナイルフィリーズ | 1600 | 1 |
2020 | 桜花賞 | 1600 | 2 | ||||
2020 | NHKマイルC | 1600 | 2 | ||||
2021 | 高松宮記念 | 1200 | 2 | ||||
2021 | スプリンターズS | 1200 | 2 | ||||
2021 | 香港スプリント | 1200 | 2 | ||||
2022 | ヴィクトリアマイル | 1600 | 3 | ||||
セリフォス | 牡 | 2019 | Le Havre | 2021 | 朝日杯フューチュリティS | 1600 | 2 |
2022 | マイルチャンピオンシップ | 1600 | 1 | ||||
2023 | 安田記念 | 1600 | 2 | ||||
マテンロウオリオン | 牡 | 2019 | キングカメハメハ | 2022 | NHKマイルC | 1600 | 2 |
Double Major | せん | 2020 | Dansili | 2023 | ロイヤルオーク賞 | 3100 | 1 |
太字は芝1600mのG1勝利。ダイワメジャー産駒は芝1600bのGT(JRAのみ)で(8.7.7.88)で単勝回収率71.5%、 牝馬に限ると(4.3.3.47)で単勝回収率99.6% |
リバティアイランドにソウルスターリング、アパパネ、ブエナビスタ……。まず来年の優駿牝馬-G1勝ち馬を予想してこのレースの勝ち馬を探す手もある。○コラソンビートはファーストシーズンサイアーランキングの首位を行くスワーヴリチャードが父で母の父が三冠馬オルフェーヴル。ハーツクライとステイゴールド経由のサンデーサイレンスUSA3×4だからステイヤー色が濃く、3代母の産駒には香港ヴァーズ-G1のウインマリリンがいる。母の父としてのオルフェーヴルは昨年のホープフルS-G1勝ち馬ドゥラエレーデを送り、その父ステイゴールドよりひと足先にG1ブルードメアサイアーとなった。 ▲サフィラは全兄サリオスが朝日杯フューチュリティS-G1勝ち馬。ハーツクライ産駒は3歳時に強くなり、停滞期を挟んで古馬になって更に強くなるケースが多いが、2歳戦実績もサリオスだけでなく、ドウデュースが朝日杯FS-G1に、タイムフライヤーがホープフルS-G1に勝っている。あと、このレースに勝てば2歳G1コンプリートとなる。 △シカゴスティングは桜花賞馬マルセリーナの姪。父ロゴタイプは朝日杯FS-G1と皐月賞-G1、安田記念-G1に勝った。ローエングリン、シングスピールと遡る父系は日本で独自の発展を遂げたサドラーズウェルズ系ということで貴重。 △ステレンボッシュはロベルト系×ミスタープロスペクター系のニックスの最新バージョンで、3代母はディープインパクトの母ウインドインハーヘア。 |
競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2023.12.10
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