広く報じられている通り、来年からはダートグレード競走の体系が大きく変わり、3歳三冠路線が作られるほかにも、短距離路線のテコ入れや開催場、日程の移動なども行われる。3歳三冠だけでなく、さきたま杯のJpn1化など、どさくさ紛れの格付け大盤振る舞いが過ぎないかということは大きな声ではいえないが、率直な感想として数少ない小欄の愛読者の目に触れるよう書き留めておきたいところではある。慣れ親しんだ下表のダートチャンピオンシップ路線も川崎記念の4月への移動により若干変化は起きるはずで、中東方面に向かう一流馬が東海S-G2に集中することになるのだろうか。2023年は序盤に世界最高賞金競走サウジカップ-G1をパンサラッサが、かつての世界最高賞金競走ドバイワールドカップ-G1をウシュバテソーロが、更に秋にはダート界の本家本丸であるブリーダーズカップクラシック-G1においてデルマソトガケが2着となった。ローカル競技扱いされていた日本のダート競馬がじかに世界へとつながっていることが明らかになったという点で画期的だ。 |
ダート戦線の覇権の変遷 | ||||||||||||||||||
年度 | 川崎記念 | フェブラリーSG1 | かしわ記念 | 帝王賞 | JDダービー | 南部杯 | JBCクラシック | チャンピオンズCG1 | 東京大賞典G1 | |||||||||
2014 | ホッコータルマエ | KM | コパノリッキー | SS | コパノリッキー | SS | ワンダーアキュート | SB | カゼノコ | MP | ベストウォーリアUSA | AP | コパノリッキー | SS | ホッコータルマエ | KM | ホッコータルマエ | KM |
2015 | ホッコータルマエ | KM | コパノリッキー | SS | ワンダーアキュート | SB | ホッコータルマエ | KM | ノンコノユメ | FN | ベストウォーリアUSA | AP | コパノリッキー | SS | サンビスタ f | SS | サウンドトゥルー | DM |
2016 | ホッコータルマエ | KM | モーニンUSA | SC | コパノリッキー | SS | コパノリッキー | SS | キョウエイギア | SS | コパノリッキー | SS | アウォーディーUSA | GS | サウンドトゥルー | DM | アポロケンタッキーUSA | Dz |
2017 | オールブラッシュ | MP | ゴールドドリーム | SS | コパノリッキー | SS | ケイティブレイブ | SS | ヒガシウィルウィン | FN | コパノリッキー | SS | サウンドトゥルー | DM | ゴールドドリーム | SS | コパノリッキー | SS |
2018 | ケイティブレイブ | SS | ノンコノユメ | FN | ゴールドドリーム | SS | ゴールドドリーム | SS | ルヴァンスレーヴ | Rb | ルヴァンスレーヴ | Rb | ケイティブレイブ | SS | ルヴァンスレーヴ | Rb | オメガパフューム | FN |
2019 | ミツバ | SS | インティ | MP | ゴールドドリーム | SS | オメガパフューム | FN | クリソベリル | SS | サンライズノヴァ | SS | チュウワウィザード | KM | クリソベリル | SS | オメガパフューム | FN |
2020 | チュウワウィザード | KM | モズアスコットUSA | SW | ワイドファラオ | SC | クリソベリル | SS | ダノンファラオ | Ub | アルクトス | SS | クリソベリル | SS | チュウワウィザード | KM | オメガパフューム | FN |
2021 | カジノフォンテン | AP | カフェファラオUSA | Ub | カジノフォンテン | AP | テーオーケインズ | AP | キャッスルトップ | MP | アルクトス | SS | ミューチャリー | AP | テーオーケインズ | AP | オメガパフューム | FN |
2022 | チュウワウィザード | KM | カフェファラオUSA | Ub | ショウナンナデシコ f | SS | メイショウハリオ | AP | ノットゥルノ | SS | カフェファラオUSA | Ub | テーオーケインズ | AP | ジュンライトボルト | KM | ウシュバテソーロ | SS |
2023 | ウシュバテソーロ | SS | レモンポップUSA | KM | メイショウハリオ | AP | メイショウハリオ | AP | ミックファイア | AP | レモンポップUSA | KM | キングズソード | AP | ? | ? | ||
同一年度にG1/Jpn1を2勝以上した馬は太字。2歳、牝馬限定戦、スプリント戦を除く。f は牝馬。 馬名の右のコラムは父系。AP=エーピーインディ、DM=デピュティミニスター、Dz=ダンチヒ、FN=フォーティナイナーUSA、GS=グレイソヴリン、KM=キングマンボ、MP=ミスタープロスペクター、Rb=ロベルト、SB=ストームバード、SC=ストームキャット、SS=サンデーサイレンスUSA、SW=サドラーズウェルズ、Ub=アンブライドルド |
○レモンポップUSAは南部杯を大差勝ち。着差2秒を1馬身=0.16秒として割り算すると12馬身半の差になり、プレレーティングの120は過小評価とはいわないまでもやや控えめかなという印象はある。力で圧倒する勝ち方はいかにもキングマンボ系らしいもの。祖母は大種牡馬デインヒルの全妹でシャーリージョーンズH-G3勝ち馬。5代母ナタルマはやはり大種牡馬ノーザンダンサーの母で、血統表の3代目は歴史的な名馬と名牝だけが埋めている。レモンドロップキッド産駒なら距離が問題となることはないように思う。 表に現れる今年の「AP」はメイショウハリオがパイロ産駒で、最後の南関東三冠馬ミックファイアと重賞初勝利がJpn1だったキングズソードがいずれもシニスターミニスター産駒。シニスターミニスターには既成勢力をひっくり返す力もあるということになる。▲メイクアリープは母の父が昨年の勝ち馬と同じスペシャルウィーク。5代母がソシアルバターフライUSAという古い名門ながら、近いところの活躍馬は4代母ブルートウショウの産駒に中京記念など重賞4勝のトウショウレオがいる程度だが、血統表5代目にヴァイスリージェント、ニジンスキー、ノーザンテーストCANとE.P.テイラー・ブランドのノーザンダンサー直仔が並ぶあたりは現代的。 ストームキャット系はこの表に見る限りではモーニンUSAとワイドファラオが登場するのみで、範囲をストームバード系に広げてもワンダーアキュートが加わるくらい。逆の見方をすればそろそろ反撃のタイミングではあるのかもしれない。△セラフィックコールはストームキャット系×サンデーサイレンスUSA系の正統派で、牝系はヴィルシーナやシュヴァルグラン、ヴィブロスらがいる名門。 ダートでも強いドゥラメンテは2頭出し。アイコンテーラーは伯父にトウショウナイトがいて3代母ノーザネットはカナダのチャンピオン牝馬。 |
競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2023.12.3
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