今回のディープインパクトは直仔が4頭、娘の仔が2頭、計6頭の出走となった。2011年以降、毎年直仔を多頭数出しして昨年までで延べ35頭が出走、1着3回2着3回3着4回の成績を残してきた。2016年には自身最多の6頭出しとなり、ディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンドで1着から3着までを占めた。2019年には直仔3頭、娘の仔3頭を送り込んでいるので、そのころから様相は変化してきたといえるだろう。ディープインパクト産駒は2019年に種付けされた24頭が最終世代で、現3歳は最後から3番目。数的にフルの戦力がある世代としては2番目となる。ディープインパクト自身がサンデーサイレンスUSAの最後から2番目の世代だったので、この世代からも大物が出る可能性はある。一方、下表に示した通り、サイアーランキング争いでは、スタートでロードカナロアに先手を取られており、その数的劣勢を主に産駒の重賞勝ちによって何とか逆転している様子が見える。このまま突き放す可能性もあるし、ロードカナロア産駒にダノンスマッシュに続くクラスが現れるようだと、勝負はもつれるかもしれない。当分は目が離せないリーディングサイアー争いだが、いずれにしても世代交代へ向けての過渡期に入ったのは間違いない。 |
2021新旧リーディングサイアー争覇 | ||||||||||
ディープインパクト | ロードカナロア | |||||||||
出走 頭数 | 勝利 頭数 | 勝利 回数 | G勝 利数 | 賞金 (千円) | 2021年 月日 | 賞金 (千円) | G勝 利数 | 勝利 回数 | 勝利 頭数 | 出走 頭数 |
26 | 1 | 1 | 40,758 | 1/5 | 114,380 | 1 | 10 | 10 | 34 | |
73 | 4 | 4 | 112,041 | 1/12 | 220,894 | 1 | 17 | 17 | 84 | |
113 | 8 | 8 | 1 | 213,904 | 1/19 | 305,018 | 1 | 27 | 27 | 141 |
149 | 11 | 11 | 1 | 281,976 | 1/26 | 351,326 | 1 | 33 | 32 | 169 |
177 | 21 | 21 | 1 | 393,556 | 2/2 | 446,630 | 2 | 39 | 37 | 198 |
209 | 29 | 29 | 1 | 526,029 | 2/9 | 518,008 | 2 | 45 | 42 | 234 |
242 | 38 | 38 | 3 | 742,828 | 2/16 | 573,007 | 2 | 49 | 43 | 259 |
264 | 44 | 44 | 3 | 786,844 | 2/23 | 717,970 | 3 | 57 | 51 | 278 |
286 | 49 | 50 | 3 | 863,376 | 3/2 | 834,983 | 3 | 68 | 61 | 294 |
295 | 54 | 56 | 4 | 967,950 | 3/9 | 866,820 | 3 | 70 | 62 | 300 |
312 | 60 | 63 | 6 | 1,164,633 | 3/16 | 936,789 | 3 | 75 | 67 | 322 |
324 | 63 | 66 | 6 | 1,234,848 | 3/23 | 1,049,592 | 3 | 87 | 74 | 334 |
348 | 69 | 73 | 7 | 1,412,852 | 3/30 | 1,282,912 | 4 | 97 | 84 | 349 |
359 | 73 | 79 | 9 | 1,690,081 | 4/6 | 1,340,302 | 4 | 101 | 87 | 361 |
367 | 80 | 88 | 10 | 1,910,955 | 4/13 | 1,444,714 | 4 | 112 | 92 | 367 |
JBISサーチの年度別サイアーランキング「サラ総合」をもとに作成。数値は累計。太字は上位の数値 |
ハーツクライ産駒はこのレースで2017年のスワーヴリチャードを含む3頭出しが最多。これまで未勝利に終わっているのは成長曲線がこのレースと時期的距離的コース形態的に合わないためと考えられるが、今年は直仔3頭、直系の孫1頭、娘の仔1頭というハーツクライなりの大攻勢をかけてきた。○ダノンザキッドは直系の孫にあたる。ジャスタウェイ産駒は一昨年にヴェロックスが2着しているので、1例だけとはいえ単純にハーツクライよりこのレースに対する適性が高まっているといえなくもない。母エピックラヴIREは愛国産で仏2勝。ちょうど今ごろ行われる1850mのヴァントー賞-G3に勝ち、サンタラリ賞-G1で2着となった。ダイイシス産駒の祖母レパードハントは英米2勝、リステッドでの3着がある。3代母アルカンドは欧州で活躍したあと米国に渡りビヴァリーヒルズH-G1に勝った。母の父ダンシリはデインヒルUSA直仔の万能の種牡馬で、ブルードメアサイアーとしても2歳6FのミドルパークS-G1から英セントレジャー-G1勝ち馬までを送り出してやはり万能ぶりを示している。これもサンデーサイレンスUSA系とデインヒルUSA系の新世代同士の組み合わせといえる。 それに対してハーツクライ直仔で母の父ガリレオの▲ヴィクティファルスはやや古風な配合といえるが、サンデーサイレンスUSA×サドラーズウェルズの配合で天皇賞(秋)に勝ったヘヴンリーロマンスの発展型と見ることもできる。今年ハーツクライ直仔は3歳重賞を本馬とグラティアスで2勝、古馬重賞もヒシイグアスが2勝しており、例年より立ち上がりが早い。その勢いでこれまで間に合わなかった皐月賞-G1に間に合う可能性もあるわけだ。母のヴィルジニアは芝1600m〜1800mで3勝を挙げ、チューリップ賞-G3で4着となった。ロベルト系シルヴァーホーク産駒の祖母シルヴァースカヤUSAはロワイヨモン賞-G3など仏重賞2勝で、産駒セヴィルは豪メトロポリタンH-G1に勝った。3代母ブブスカイアの孫シックスセンスは京都記念に勝ち、皐月賞ではディープインパクトの2着となった。 △ラーゴムは父オルフェーヴルが3着だったきさらぎ賞-G3に勝っているので、現時点では父より優秀といえる。母はファピアノ4×4と祖母の父ディストーティドヒューマー経由でフォーティナイナーUSAが入り、ミスタープロスペクターの血が濃い。特にフォーティナイナーUSAはオルフェーヴル産駒の能力の底上げには有効なようだ。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.4.12
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