10月のコックスプレートでオーストラリアの名牝ウィンクスが29連勝を達成した。米国1990年代のシガーの16連勝、2010年まで続いたゼニヤッタの19連勝などは連勝の世界記録というわけでもないけれど、頂点を争うレベルでの連勝としてはそのあたりが限界かと感じられたものだが、上には上がありますね。日本での重賞レベルでの連勝となるとスマートファルコンの9が今のところ最高で、そのうちの6つがG1またはJpn1だから質的にも文句のつけようがない。それを代表格として、ゴールドアリュール産駒には連勝するものが多いだろうと重賞勝ち産駒の連勝をまとめたのが下表。いい部分だけを抽出しているので良く見えるのではないかという批判は受け付けるが、エスポワールシチー、コパノリッキーといった有名どころ以外にも、連勝の過程で急登坂的に格を上げていくものも多い。連勝の要因にはいろいろあるだろうが、ディープインパクト系の一球入魂型では数が続かないだろうし、ステイゴールド系の手抜き型ではそもそも連勝に向いていない。ゴールドアリュール産駒の場合は、勝ったレースの日付に表れているように、勢いに任せて間隔を詰めて走るのではなく、比較的レース間隔を開けての出走が多いし、スマートファルコンがそうだったように、慎重に相手関係を選んでの出走が連勝につながっている場合が多い。このあたりは自分のペースで気分良く走って強く、肉弾戦的なレースや他馬との競い合いでは淡泊なところを見せるゴールドアリュール系の特徴を生かせるかどうかということでもある。ゴールドアリュール産駒の◎サンライズノヴァは根岸S-G3での僅差2着、フェブラリーS-G1の4着など力を示しながら、その後のオープン特別でも連続2着に敗れていたが、ここにきて連勝モードに入った。母の父サンダーガルチUSAはケンタッキーダービー-G1に勝ったあとプリークネスS-G1で敗れたが、ベルモントS-G1で2冠を獲得すると、スワップスS-G2、トラヴァーズS-G1、ケンタッキーCクラシックまで4連勝した。種牡馬としては米2冠馬ポイントギヴンを出したし、母の父としてもブリーダーズCクラシック-G1のバイエルンなどの大物を出しているので、コンスタントな成功はなかったが、当たれば大きい。ゴールドアリュール×サンダーガルチUSAは、サンデーサイレンスUSA×ミスタープロスペクター+αという現代ダート血統の定型に沿った血統。リアルシャダイUSA産駒の祖母リアルサファイヤはフラワーCなど3勝を挙げた活躍馬で、産駒のサンライズバッカスはフェブラリーS-G1に勝った。3代母ワールドサファイヤの曾孫には日本テレビ盃などダート重賞4勝のマコトスパルビエロがいる。この牝系、特に叔父にサンライズバッカスがいる点が本馬のプラスアルファの部分となる。5代母クニノボリの産駒にはスプリングSのメジロフレーム、孫には京都大賞典のメジロカーラといった名も見える。 |
ゴールドアリュールとその主な産駒の連勝 | |
馬名 | 連勝 レース(年.月.日) |
ゴールドアリュール | [1]500万(02.4.13)→[2]端午S(02.4.27) |
[1]ジャパンダートダービー(02.7.4)→[2]ダービーグランプリ(02.9.23) | |
[1]東京大賞典(02.12.29)→[2]フェブラリーS(03.2.23)→[3]アンタレスS(03.4.27) | |
スマートファルコン | [1]500万(07.12.16)→[2]ジュニアC(08.1.6) |
[1]KBC杯(08.8.10)→[2]白山大賞典(08.10.7) | |
[1]浦和記念(08.11.26)→[2]兵庫ゴールドT(08.12.25)→[3]佐賀記念(09.2.11)→[4]名古屋大賞典(09.3.25)→[5]かきつばた記念(09.5.4)→[6]さきたま杯(09.5.4) | |
[1]かきつばた記念(10.5.3)→[2]さきたま杯(10.5.26) | |
[1]JBCクラシック(10.11.3)→[2]浦和記念(10.11.24)→[3]東京大賞典(10.12.29)→[4]ダイオライト記念(11.5.2)→[5]帝王賞(11.6.29)→[6]日本テレビ盃(11.9.23)→[7]JBCクラシック(11.11.3)→[8]東京大賞典-G1(11.12.29)→[9]川崎記念(12.1.25) | |
エスポワールシチー | [1]500万(08.8.30)→[2]1000万(08.9.27)→[3]1600万(08.11.2)→[4]トパーズS(08.11.24) |
[1]マーチS-G3(09.3.29)→[2]かしわ記念(09.5.5)→[3]南部杯(09.10.12)→[4]ジャパンCダート-G1(09.12.6)→[5]フェブラリーS-G1(10.2.21)→[6]かしわ記念(10.5.5) | |
[1]南部杯(13.10.14)→[2]JBCスプリント(13.11.4) | |
オーロマイスター | [1]1000万(09.6.7)→[2]1000万(09.7.5) |
シルクフォーチュン | [1]500万(10.5.16)→[2]1000万(10.6.13)→[3]1000万(10.7.10)→[4]1600万(10.10.3) |
フーラブライド | [1]500万(13.9.28)→[2]1000万(13.10.27)→[3]愛知杯-G3(13.12.14) |
コパノリッキー | [1]3歳未(13.1.12)→[2]500万(13.1.27) |
[1]伏竜S(13.3.31)→[2]兵庫チャンピオンシップ(13.5.2) | |
[1]フェブラリーS-G1(14.2.23)→[2]かしわ記念(14.5.5) | |
[1]東海S-G2(15.1.25)→[2]フェブラリーS-G1(15.2.22) | |
[1]かしわ記念(16.5.5)→[2]帝王賞(16.6.29)→[3]南部杯(16.10.10) | |
[1]かしわ記念(17.5.5)→[2]南部杯(17.10.9) | |
クリソライト | [1]500万(13.4.6)→[2]昇竜S(13.5.19)→[3]JDダービー(13.7.10) |
メイショウスミトモ | [1]阿蘇S(16.8.13)→[2]ラジオ日本賞(16.9.17) |
ウィッシュハピネス | [1]2歳未(14.8.24)→[2]エーデルワイス賞(14.10.16) |
ララベル | [1]ローレル賞(14.11.5)→[2]東京2歳優駿牝馬(14.12.31)→[3]桜花賞=浦和=(15.3.25) |
[1]スターバーストC(15.10.15)→[2]ロジータ記念(15.11.18) | |
ゴールドドリーム | [1]新馬(15.12.13)→[2]500万(16.1.5)→[3]ヒヤシンスS(16.2.21) |
[1]かしわ記念(18.5.2)→[2]帝王賞(18.6.27) | |
ワンミリオンス | [1]1000万(16.10.30)→[2]1600万(16.11.26)→[3]TCK女王盃(17.1.25)→[4]エンプレス杯(17.3.1) |
エピカリス | [1]新馬(16.8.14)→[2]500万(16.10.15)→[3]北海道2歳優駿(16.11.1)→[4]ヒヤシンスS(17.2.19) |
サンライズノヴァ | [1]アハルテケS(18.6.9)→[2]グリーンチャンネルC(18.10.8)→[3]武蔵野S-G3(18.11.10) |
○ルヴァンスレーヴは伏竜Sの2着がなければ今ごろ7連勝……だったのか、あの2着がその後の快進撃のバネとなったのかは何ともいえないところだが、父の産駒でダートに実績を残したサクセスブロッケンはデビューから端午Sまで4連勝のあと、日本ダービーでしんがり負けを喫したものの、すぐに立ち直ってジャパンダートダービーに勝った。父の産駒には3歳時に菊花賞、4歳でジャパンC-G1に勝ったエピファネイアもいて、3、4歳で集中的に成果を挙げる現代競馬向きの傾向があって、本馬の場合は母の父がネオユニヴァースなのでそれがより顕著に現れるかもしれない。祖母の父ティンバーカントリーUSAはアドマイヤドンの父、コパノリッキーの母の父として、ダートにおいては少ない登場頻度で大きな存在感を示しており、今度は祖母の父としての大きな成功例が本馬ということになるのかもしれない。 ▲ケイティブレイブは5代母がグラマー。ストライキング、ベイビーリーグと経てラトロワンヌに遡る米国屈指の名門で、伯父ビーマイナカヤマUSAはかしわ記念などダート重賞8勝を挙げた。サンデーサイレンスUSA直仔の父アドマイヤマックスは高松宮記念に勝ち、その牝祖ファンシミンUSAはルヴァンスレーヴと同じ。アドマイヤマックスの祖母シャダイマインの父ヒッティングアウェーUSAもストライキングの産駒で、父母両方がラトロワンヌの血を受けていることでサンデーサイレンスUSAがより生きる。3代目にノーザンテーストCANとビーマイゲストという似たタイプのノーザンダンサー直仔を対置させている点でもデザイン性が高い。 これら牡馬に切り込むとしたら牝馬△アンジュデジール。父のディープインパクトは本年G1随一の穴血統。ジャパンCダート時代を含めてこのレースに勝った唯一の牝馬サンビスタは、スズカマンボ×ミシルUSA×パークリージェントCANの配合。サンデーサイレンスUSAとミスタープロスペクターとヴァイスリージェントという3点セットは並び順こそ違うが、本馬と共通。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2018.12.2
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