秋華賞は今年で20回目を迎える。古馬に開放されたエリザベス女王杯を引き継ぐ形ながら、内回り2000mの設定となったせいもあるのか、2桁人気馬の勝利はブゼンキャンドル(1999年)、ティコティコタック(2000年)、ブラックエンブレム(2008年)の3度あり、馬連94,630円(1999年)とか3連単10,982,020円(2008年)の大波乱もあった。勝ち馬の父を見ても第1回の勝ち馬ファビラスラフインFRがファビュラスダンサーだったのに始まって、順にメジロライアン、ブライアンズタイムUSA、モガミFR、サッカーボーイ、ダンシングブレーヴUSA、デインヒルUSA、サンデーサイレンスUSA、エンドスウィープUSA、サンデーサイレンスUSA(2回目)、キングヘイロー、アグネスタキオン、ウォーエンブレムUSA、マンハッタンカフェ、キングカメハメハ、ジャングルポケット、ディープインパクト、スズカマンボ、ディープインパクト(2回目)とほかのレースにない多様さを示している。サンデーサイレンスUSA産駒がなかなか勝てず、最終的にスプリントのタイトルより少ない2勝にとどまっているのもかの大種牡馬の実績を考えれば苦手だったと見てもいいのかもしれない。サンデーサイレンスUSAの正統後継者たるディープインパクト産駒が既に2勝を挙げているのはさすがではあるが、これとてサンデーサイレンスUSA同様に意外な苦戦を強いられる可能性がなくはない。最有力馬を抱えての5頭出しという圧倒的な戦力が逆に内回り2000mで隙の生じる要因とはならないだろうか。そこで、秋華賞未勝利種牡馬に注目してみようということになる。 |
クロフネUSA産駒の母の父別ランキング | |||||
母の父 | 登録 頭数 | 出走 頭数 | 勝馬 頭数 | 収得賞金 (万円) | 主な活躍馬 |
サンデーサイレンスUSA | 327 | 261 | 186 | 611662 | ホエールキャプチャ、フサイチリシャール、 ブラボーデイジー、ユキチャン他 |
トニービンIRE | 52 | 43 | 34 | 135986 | カレンチャン、クロフネサプライズ、 アップトゥデイト(障害) |
フジキセキ | 73 | 55 | 37 | 66684 | ホワイトフーガ、トウショウカズン |
ダンスインザダーク | 55 | 41 | 29 | 48002 | サンライズモール |
Nureyev(USA) | 8 | 8 | 5 | 47189 | スリープレスナイト |
ノーザンテーストCAN | 33 | 30 | 20 | 44302 | ベストロケーション |
Seeking the Gold(USA) | 15 | 14 | 11 | 35066 | ホワイトメロディー、ゴールデンハインド |
アグネスタキオン | 52 | 33 | 18 | 34346 | ピーエムデメテル |
ウイニングチケット | 5 | 4 | 3 | 32187 | ブラックシェル、シェルズレイ |
ブライアンズタイムUSA | 28 | 21 | 13 | 31840 | シゲルスダチ |
JBISサーチ「サイアーニックスランキング」より(10月13日現在) |
春のテーマがキングカメハメハのディープインパクトに対する優勢だったが、ドゥラメンテが戦線を離脱し、秋を迎えた前哨戦でレッツゴードンキがディープインパクト産駒に完敗すると、それももう忘れられかけているのではないだろうか。しかし、ローズSで3着に食い込んだトーセンビクトリーはキングカメハメハ産駒。このように新勢力の台頭があるということは、まだ勢いがある証拠。○トーセンビクトリーは母トゥザヴィクトリーがエリザベス女王杯勝ち馬。現代の最大勢力というべきキングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAで、前段のクロフネUSA産駒にならうと血統登録が422頭、出走頭数が359頭(10月13日現在)あり、キングカメハメハ産駒は3割が母の父サンデーサイレンスUSAということで、この比率はクロフネUSAを凌ぐ。トーセンビクトリーは全兄トゥザグローリー、トゥザワールドともにG1にあと一歩という位置だが、性が違い、厩舎も違えば別の良さが出てくるかもしれない。 ディープインパクト産駒では上昇の勢いがある▲タッチングスピーチ。母リッスンIREは英2歳G1のフィリーズマイル勝ち馬で、祖母ブリジッドの孫に英2000ギニー-G1などマイルG1・4勝のヘンリーザナヴィゲーター、孫にブリーダーズCターフ-G1のマジシャンがいる。3代母ラヴラヴィンの孫にはフォレ賞-G1勝ち馬で安田記念でも3着となったドルフィンストリートFRがいるので、日本にも馴染みの深い牝系。サドラーズウェルズ牝馬にサンデーサイレンスUSAまたはその直仔が配合されたケースではアメリカンオークス-G1のシーザリオ、天皇賞(秋)-G1のヘヴンリーロマンス、皐月賞-G1のアンライバルドが出ていて、シーザリオは2400mの優駿牝馬にも勝ったが、どれも2000mで強烈な決め手を発揮した。そこから推測するに、この配合は2000mがベストであるのかもしれない。 △ミッキークイーンの母はドラール賞-G2(1950m)、メゾンラフィット杯-G3(2000m、2回)などに勝った中距離馬で、一族の重賞勝ち馬は4代母の孫にようやく南アフリカのG3勝ち馬が現れる程度。5代母の孫に英2000ギニー-G1に勝ち種牡馬として成功したノノアルコUSAがいる。その半弟ストラダビンスキーIREも輸入されているので日本とは30年越しの縁のある牝系で、このような休眠牝系を覚醒させる技はディープインパクトもサンデーサイレンスUSA並みのものがあるようだ。 アスカビレンの父ブラックタイドはディープインパクトの全兄で秋華賞未勝利種牡馬。この世代の牡馬はキタサンブラックをはじめ頑張っていて、その勢いが牝馬に波及するかも。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.10.17
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