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2014年に日本調教馬は海外で29頭が40回出走して4つのG1を制した。今年も28頭が35回出走して3つのG1とひとつの韓国ローカルG3に勝った。昨年はシーズンの初期にドバイでジャスタウェイとジェンティルドンナが世界最高レベルのパフォーマンスを示したが、今年のモーリスとエイシンヒカリの快挙は12月の香港。下表は有馬記念G1のプレレーティング(レースが行われる前の各馬の評価=オフィシャルレーティング)を過去に遡って並べたもので、国際的な成功のピークの位置の違いが間接的にこのレースの質の違いにも影響し、ことプレレーティングに限れば去年と今年の落差が大きくなった。115以上が9頭いて、そのうち2頭が120であれば立派なもので決して低レベルということはないが、個々のレーティングの推移を見ると、ゴールドシップは阪神大賞典-G2で前年までの自己ベストを下回る120の評価を得たきり天皇賞(春)-G1の勝利によってそれが更新されることはなく、ラブリーデイも宝塚記念-G1、京都大賞典-G2、天皇賞(秋)-G1でずっと120が続いた。要するに中長距離部門では上半期の既成勢力を乗り越える者が現れなかったということになる。このまま新たな大物の登場を見ることなく暮れてしまうのだろうか? いや、そんなことはない、最後にはちゃんと帳尻が合うはずだというのが今回のテーマ。 |
| 有馬記念出走馬のプレレーティング〜過去5年と今年 | ||||||
| 2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 | 2010 | |
| 130 | ジャスタウェイ | |||||
| 129 | ||||||
| 128 | エピファネイア | |||||
| 127 | ||||||
| 126 | ||||||
| 125 | オルフェーヴル | ブエナビスタf | ||||
| 124 | ゴールドシップ | ゴールドシップ | ブエナビスタf | |||
| 123 | ジェンティルドンナf | ルーラーシップ | ||||
| 122 | ヴィクトワールピサ トーセンジョーダン | |||||
| 121 | エイシンフラッシュ ダークシャドウ | アーネストリー ヒルノダムール | ||||
| 120 | ゴールドシップ ラブリーデイ | トゥザグローリー | オルフェーヴル トゥザグローリー | ドリームジャーニー ペルーサ | ||
| 119 | ラストインパクト | ワンアンドオンリー | トーセンジョーダン | ジャガーメイル | ヴィクトワールピサ レッドディザイアf | |
| 118 | ワンアンドオンリー | フェノーメノ | アドマイヤラクティ | トレイルブレイザー | エイシンフラッシュ ルーラーシップ | エイシンフラッシュ |
| 117 | キタサンブラック サウンズオブアース | ウインバリアシオン ラキシスf | ダノンバラード ルルーシュ | ゴールドシップ ビートブラック | ローズキングダム | |
| 116 | アドマイヤデウス マリアライトf | ヴィルシーナf | メイショウベルーガf | |||
| 115 | リアファル | トゥザワールド トーセンラー メイショウマンボf ラストインパクト | オウケンブルースリ ダノンシャンティ ネヴァブション | |||
| プレレーティングは当該レース前1年間に得た各馬のオフィシャルレーティングの最高値。牝馬(f)は4点を加えてランキング。太字は3着以内 | ||||||
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ディキシーランドバンドといえばノーザンダンサー直仔としてもブルードメアサイアーとしての実績はトップクラスで、わが国でも菊花賞馬デルタブルースの母の父として知られるが、特にこのレースではアメリカンボスUSAの大駆けが思い出される。ディキシーランドバンドの娘の仔○サウンズオブアースはもう長く勝っていないが、本気を出せば強いネオユニヴァースの産駒で、半兄ドミニカンはブルーグラスS-G1の勝ち馬。祖母の父の米三冠馬セクレタリアトからも底力を受けている。牝系はタップダンスシチーUSAやチーフズクラウンの出る名門で、4代母クリスエヴァートは1974年のニューヨーク牝馬三冠を制して最優秀3歳牝馬のタイトルを得た。4歳暮れではあるが、まだ未知の部分を残した無冠の大器であるかもしれない。 有馬記念といえばステイゴールドの舞台でディープインパクト産駒は出走例そのものが少なかったが、昨年は一気に7頭出しを敢行してジェンティルドンナが4番人気ながら1着となった。あとはラキシスの6着が最高なので、ジェンティルドンナが強かっただけである可能性は高いが、ディープインパクト自身、有馬記念は2着1回と圧勝1回がある。今回は3頭出しだが、ジャパンC-G1・2着のラストインパクトでもそれほど上位人気にはならないのだから何とも不気味。▲マリアライトはジャパンダートダービーのクリソライトの半妹で神戸新聞杯-G2のリアファルの半姉。母の全弟にはジャパンCダートのアロンダイトがいる。A級ダート一族から芝でも活躍するようになったのは母の父エルコンドルパサーUSAの良さがいろいろな発現の仕方で出ているのだろうし、種牡馬の良さを生かす有能な繁殖牝馬ということでもある。何といってもヌーヴォレコルトに勝っているのが大したもので、この秋ヌーヴォレコルトを負かしたのはほかにショウナンパンドラとエイシンヒカリ。もう一段階上の活躍を期待していいのではないか。 弟の△リアファルは父が2004年の勝ち馬。サンデーサイレンスUSA系種牡馬の増加に比例しているのが大レースの父仔制覇。今ではすっかり珍しいことではなくなった。これは偉大な血統を手に入れただけでなく、それが手の内に入っているということであり、この20年あまりをかけてサンデーサイレンスUSAが日本の競馬にもたらした大きな果実のひとつ。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2015.12.27
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