ブエナビスタの桜花賞は父のスペシャルウィークにとってシーザリオによる05年オークス以来のクラシック制覇となった。シーザリオの同世代には、ほかにも東スポ杯2歳Sのスムースバリトン、年をまたいで新馬、クロッカスSと連勝したパリブレストらの大物候補がいて、それらの活躍がスペシャルウィークの05年の種付け頭数倍増に貢献したことは想像に難くない。下表に示したのは05年に200頭以上の種付けをした種牡馬の一覧。ダンスインザダーク以外はいずれも皐月賞に複数の産駒を出走させている(太字)。こういってしまうと身も蓋もないが、いい牝馬にたくさん種付けすれば走る子が生まれる確率が高くなるという数の論理が成り立っているわけで、その一方、スペシャルウィークのように一旦落ち込んでも実力(というか産駒の活躍)次第で再浮上が可能ということでもある。 |
200頭クラブ一覧 〜種付け頭数が200頭を超えた人気種牡馬(2005年度基準) | ||||||||
種牡馬 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | |
19 | キングカメハメハ | − | − | − | 244 | 256 | 216 | 202 |
8 | スペシャルウィーク | 211 | 206 | 105 | 234 | 216 | 126 | 95 |
21 | ネオユニヴァース | − | − | − | 228 | 247 | 251 | 169 |
2 | シンボリクリスエスUSA | − | − | 216 | 227 | 183 | 169 | 217 |
1 | マンハッタンカフェ | − | 211 | 206 | 221 | 201 | 164 | 154 |
4 | ダンスインザダーク | 200 | 233 | 188 | 215 | 206 | 116 | 98 |
( )数字は本年サイアーランキング順位(JBIS発表4月14日現在) |
そのスペシャルウィークの反発力を買って◎はリーチザクラウン。母クラウンピースはダートで1勝を挙げたのみ。全姉クラウンプリンセスも重賞に手が届いていないが、祖母クラシッククラウンUSAは2歳時にフリゼットSG1、3歳時にガゼルHG1と2つの米G1勝ちのある名牝で、その半兄チーフズクラウンはブリーダーズCジュヴェナイルG1、トラヴァーズSG1などG1・8勝の名馬。4代母クリスエヴァートもやはり名牝で、エイコーンSG1、マザーグースSG1、CCAオークスG1のニューヨーク牝馬三冠を達成し、子孫にはG1・7勝の名牝サイトシークを筆頭に多くの活躍馬が出た。ケンタッキーダービー馬ウイニングカラーズやジャパンCG1のタップダンスシチーUSAも出る名門牝系だ。そこに3代母シックスクラウンズの父セクレタリアト以来、米国を代表する血脈が配されてきた。シアトルスルー×ミスタープロスペクターの配合による大物はジムビームSG2のイヴェントオブザイヤーくらいしかいないが、シアトルスルーが1世代退いたエーピーインディとミスタープロスペクター牝馬の組み合わせからはラフィアンHG1のトミスーズディライトから03年の米年度代表馬マインシャフトまで多くの重賞勝ち馬が生まれており、米国における近年最強のニックスともいわれている。エーピーインディはシアトルスルー×セクレタリアトの配合だから、パーツ的にはこの母に共通する部分が多い。スペシャルウィークとの配合ではマルゼンスキーとシアトルスルーという同い年の名馬の共存がキーとなる。プリンスキロやラトロワンヌ〜ブルーラークスパーの血を共有する点はブエナビスタにおけるマルゼンスキーとカーリアンの関係に似ており、そこからニジンスキーの近交を取り除いた形。全体に欧州色の濃いブエナビスタに比べると典型的米国血統の影響が強い点は否めないので、先行力が持ち味となるのは当然だが、最後にもうひと伸びする底力も期待して良さそうだ。 ネオユニヴァース産駒のロジユニヴァースとアンライバルド。いずれも母が欧州型の配合。ネオユニヴァース自身、SS後継種牡馬の中でも特に古風な欧州型といえる血統なので、その欧州色を維持する配合様式が今のところ正解ということなのだろう。○アンライバルドは兄がダービー馬フサイチコンコルドで、甥には皐月賞馬ヴィクトリー。ほかにも近親にはボーンキングやリンカーンといった活躍馬がいて、祖母サンプリンセスは英オークスG1、英セントレジャーG1に勝ち、キングジョージVI世&クイーンエリザベスSG1・3着、凱旋門賞G1・2着と性や年齢を超えて活躍した名牝。ネオユニヴァース自身も遡ればそこに至るサニーガルフ系の名門ファミリー。一方の△ロジユニヴァースは3代母ソニックレディが愛1000ギニーG1、コロネーションSG2、サセックスSG1、ムーランドロンシャン賞G1と欧州マイル戦線でやはり性や年齢を超えて活躍した名牝。この母は欧州血統といってもグリーンデザートやマキアヴェリアン、ヌレエフといった現代的な血脈を持つ点がスピード面での強み。2頭の比較では、ファミリーの日本での実績を優先してアンライバルドを選ぶ。 サンデーサイレンスUSA時代の皐月賞では、オペラハウスGBかブライアンズタイムUSAが一角崩しというのが数年に一度のパターン。ブライアンズタイムUSAの代役を務めるとすれば、同じロベルト系のシンボリクリスエスUSAということになるだろう。初年度産駒は大活躍といっていいのかどうか、まあ、量的には大活躍で、質的にもサクセスブロッケンがG1勝ちを果たして、2世代目が3歳を迎えた今年、早くもサイアーランキング2位につけている。産駒は今の時期から急速に強くなる場合が多いので、今後の展開次第ではデビュー3年目でのリーディングという快挙も見えてくるかもしれない。▲ミッキーペトラは3代母の孫に名馬ディープインパクト、NHKマイルCのウインクリューガーがいる。4代母ハイクレアは英1000ギニーG1、仏オークスG1に勝ち、“キングジョージ”G1・2着。その子孫に英ダービー馬ナシュワンや英チャンピオンSG1のネイフが出る名門牝系。母の父がミスタープロスペクター系なので、ロベルト系のこの父とは大レース向きのニックスとなる。父が米三冠馬シアトルスルー、母は英2000ギニー馬ロモンドという賢兄賢弟の血を持つあたりもバランスの良さを感じさせる。 ナカヤマフェスタはブリーダーズCターフG1のシアトリカルやアーリントンミリオンG1のパラダイスクリークUSAが出る牝系。祖母の父が大レースに強いデインヒルUSAで、母の父がリボー系ヒズマジェスティ直仔、そして父が大物食いのステイゴールドと、穴党血統派が食指を動かさざるを得ないアイテムを満載。どこをとっても晩成の傾向が強いので、本当に強くなるのは古馬になってからかもしれないが、リスクを冒して先物買いする価値はある。 ゴールデンチケットは祖母が名牝スキーパラダイスUSAで、3代母スキーゴーグルもエイコーンSG1勝ちの名牝。昨年の勝ち馬キャプテントゥーレのイトコで、しかも鞍上は同じ。キングカメハメハ×サンデーサイレンスUSAの配合には、これまでのところ全日本2歳優駿2着のナサニエルくらいしか成功例がないが、父が急速に力をつけてきたのは3歳の今ごろ。真価を発揮するのはこれからなのかも。 |
競馬ブック増刊号「血統をよむ」2009.4.19
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