桜花賞出走馬が2頭にとどまったサンデーサイレンス最終世代は、今回もやはり3頭が出てきただけ。昨年2歳リーディングの座が危うくなりかけたことで示されたこの世代の仕上がりの遅れは、まだ完全には回復されていないようだ。初年度産駒が現れてからこれまでの11年、サンデーサイレンス産駒は皐月賞で42頭が出走して3着以内に入ったのが14頭、ダービーは50頭出走して3着以内14頭、菊花賞は48頭出走して3着以内10頭だから、率に直すと皐月賞0.333、ダービー0.280、菊花賞0.208とクラシックではこのレースがもっともサンデーサイレンスどっぷり度が高かった。別表は過去20年の上位馬の血統を羅列したもので、何の芸もなくて申し訳ないが、そこでも下半分はサンデーサイレンスとブライアンズタイムのヘイルトゥリーズン系が圧倒的な勢力を誇っていることは分かる。ほかの血統はその両雄がぶつかってできた僅かな隙間を埋めているに過ぎず、この12年間でその隙間をこじ開けて勝ち馬となったのはセイウンスカイとテイエムオペラオーだけだ。それらもダービーではスペシャルウィークとアドマイヤベガといった本領を発揮したサンデーサイレンス産駒に敗れているので、少数派に逆転のチャンスがあるとすれば今回だろうという見立ては可能。しかも、テイエムオペラオーの1回とはいえ、実績を残しているオペラハウス産駒なら期待をかけるに足るといえるのではないだろうか。◎メイショウサムソンは母の父がダンシングブレーヴで、こちらも皐月賞ではスペシャルウィークに先着したキングヘイローを送る。牝系は天皇賞・秋と有馬記念に勝った4代母ガーネットを経た名門フロリースカップ系で、3代母エールの娘には、ローズSに勝ち、エリザベス女王杯でリワードウイングの強襲に3/4馬身敗れただけの通算5戦4勝でキャリアを終えた名牝アサクサスケールがいる。思えばそれがガーネット分枝にとってはG1ニアミスの最大のものだったが、フロリースカップ系にはもともと大レース・ニアミスを繰り返す面があり、また、ケンホウの桜花賞から5代40年ほどしてジャパンダートダービーのビッグウルフが出現したように、時間がかかってもいつか答が出るという例がある。根拠に乏しいのだが、そろそろガーネット系にあたりが来ても良さそうなものだ。父系がサドラーズウェルズ、母系がダンシングブレーヴというと欧州2400m型のノーザンダンサー系同士の組み合わせであり、大刀2本の二刀流といえなくもないが、祖母がナスルーラ3×4のインブリードを持つので、その点で軽快さは補われているし、大技を決めるにはある程度の極端さも必要だろう。 桜花賞ではSS直仔をSSの孫が差し切っているように、ここも“孫世代”を狙うのが現実的。でも、孫が多くて絞るのに困る。そこで直近の桜花賞での実績を優先してアドマイヤベガ産駒狙い。○はインテレット。4代母はパロクサイドで、特に名高いダイナカールの系統からは高松宮記念のオレハマッテルゼも出ているが、祖母の孫にマイルチャンピオンシップのトウカイポイントが出たこちらの分枝も水準以上。実績あるサンデーサイレンス×ノーザンテーストに大レースで強いこの母の父が挟まるパターンも魅力的だ。 桜花賞馬は北海道市場オータムセール出身で、▲ゴウゴウキリシマも同じセリで取引された。1018万円で吉田家に買われたキストゥヘヴンに比べると262万円の価格だけとってもいかにも地味だが、その血統を構成するパーツは豪華。祖母はマルゼンスキーの半妹で、母の父バイアモンはブラッシンググルーム系らしくブルードメアサイアーとして成功した。父はタイトルこそ高松宮記念だけだが、欧州最強馬×米国の歴史的名牝の超良血で、2歳時には東京1800mでレコード勝ち、皐月賞2着、引退戦の有馬記念もテイエムオペラオーから0秒2差の4着だったことを忘れてはいけない。 △ナイアガラは祖母の父がバイアモン。母はサンタラリ賞に勝ったフランスのG1牝馬で、その年の秋にはジャパンCにも来日してテイエムオペラオーの7着だった。そのレースで3着だったのが父のファンタスティックライトで、4、5歳時は2年連続エミレーツ世界シリーズ王者となっている。同時にジャパンCではテイエムオペラオーの、ドバイではステイゴールドの強さの引き立て役に回った親日家でもあった。大活躍は古馬になってからだが、3歳でも春秋にクラシック前哨戦を制し、そこそこの早熟性も示している。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2006.4.16
©Keiba Book