いきなり手前味噌で恐縮だが、合同フリーハンデの特別企画として、1970年から昨年までのレーティング上位馬約200頭をズラッと並べた「オールタイムベスト」をホームページ上で近日中に公開することになった(こちらにアップしてあります)。厳密にいうと1970〜1985年度は山野浩一氏の個人ハンデ、1986年度以降、そこにサラブレッド血統センターとケイバブックが加わって「合同」フリーハンデとなる。時代の流れや国際化の大波を浴びた競馬そのものの変容を受けて、レーティングの基準も手法も変化を遂げているので、勢い大部分を近い年の活躍馬が占めることになり、いわゆる最強馬ランキングとは感覚的に大きな隔たりがあるかもしれない。しかし、できればそのあたりのギャップも楽しんでいただければと思っております。 さて、そこで堂々トップタイにランクされたのが◎タップダンスシチーで、これは一昨年のジャパンCの大差勝ちが効いている。フリーハンデのレーティングはその馬の最大瞬間風速を記録するようなものなので、それだけのパフォーマンスをつねに期待するわけにもいかないが、その翌年に宝塚記念を楽勝し、逆境の有馬記念でも2着に踏ん張った事実は、ジャパンCで得た非現実的とさえいえるレーティングにリアリティを与えている。およそリボー系の大物には、そういった火事場の馬鹿力的なパフォーマンスを発揮する特異な能力が備わっている場合が多く、同時にそれがいつ発揮できるか分からないムラな面もある。02年の有馬記念で2着したあたりまでは、そういったリボー系の穴馬らしい性格を見せていたが、今から考えるとあれもその後に続く快進撃の予兆に過ぎなかったわけだ。 この春の天皇賞は1、2、4着がミスタープロスペクターの血を引いていた。米国ではアフリートの孫アフリートアレックスがプリークネスSとベルモントSを圧勝。第一関門のケンタッキーダービーもうまく乗っていれば27年ぶりの三冠馬誕生となっていた。英ダービー馬モティヴェーターの母の父はゴーンウェストで、仏2冠馬シャマーダルはマキアヴェリアンの娘の子、仏2冠牝馬ディヴァインプロポーションズはキングマンボ産駒。これほどミスタープロスペクター血脈が長距離戦に進出したケースは過去に例を見ない。仏ダービーは今年から距離を2100mに短縮しているので、クラシックの方からミスタープロスペクターに近寄ってきているという見方もできるが、その勢力はもう短距離の領域に閉じ込めておけないものになった。○スイープトウショウの父エンドスウィープにもそういったミスタープロスペクター系の開拓力といったものが感じられる。祖母の父トウショウボーイは77年のこのレースの勝ち馬で、母の父の産駒ダンシングサーパスは94年に3着。何より破壊力を感じさせる血統だ。ちなみにミスタープロスペクター系×ノーザンダンサー系×ナスルーラ系という配合の骨組みは、ディヴァインプロポーションズと共通している。 ここ数年のこのレースでは、なぜかサンデーサイレンス直仔の不振が続いているので、もう少し非SS系で攻めてみたい。▲ビッグゴールドはオークス馬チョウカイキャロルと同じブライアンズタイム×ミスタープロスペクター。ロベルトの血はミスタープロスペクターの適応距離伸張、底力増強といった点で極めて有効で、現にアフリートアレックスもこのパターンに当てはまる。3月から始まった快進撃は、まだ落ち込む兆候を示していない。こういうときのブライアンズタイムは買い。 △ゼンノロブロイも母の父からミスタープロスペクターが入る。マイニングはミスタープロスペクター×バックパサーで、これはミスワキと同じ。ということはサイレンススズカと血統表の16分の11が同じ。その残りも全部が米国血脈で、欧州色の強い牝馬との組み合わせが多いSS後継種牡馬群とは一線を画す異色の配合。種牡馬となってからが面白い存在だと思うが、その前に欧州遠征という大仕事が控えているな。 トウショウナイトは父がミスタープロスペクター系で、母の父がリボー系。距離が長ければ長いほど良いというわけではない反面、重い良血ばかりを集めているだけに機動力に欠ける。そこが最後の詰めに出ているような気がするが、まだ成長の余地が大きい4歳馬。道悪になれば、より可能性は高まる。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2005.6.26
©Keiba Book