思いつくまま◎ディープインパクトに関する断片を拾ってみた。読みにくくてすみません。ただ、今のところ、分かっている事実を並べることしかできないというのが正直なところで、それらを結び付け積み上げて何らかの推断を下すには至らない。これまでも四季報や週刊誌で何度かこの馬の血統について書く機会はあったが、どうも書きにくい。強いのはもちろん分かる範囲では分かるし、その背景には材料も豊富に揃っているにもかかわらず、もっともらしいが嘘くさい文言を並べる結果に終わってしまう。名馬というのはそういうものかもしれないな。しいていえばリファール的な活発さが濃く出ているようには思うが、ここは降参して、サンデーサイレンスが日本競馬に最後に用意してくれたご馳走を黙してじっくり味わうのが礼儀というものだろう。 1986年生まれを代表する競走馬といえば米国のサンデーサイレンスとイージーゴーア、欧州でナシュワンとオールドヴィックとなるが、ステージが替わって台頭してきたのがデインヒル。英2000ギニーではナシュワンに完敗の3着だったが、種牡馬となって南北両半球でG1勝ち馬を量産し、種牡馬の父としてもストームキャットと並ぶ存在にまで上り詰めた。基本的にマイラーだが、簡単には絞り尽くせない底力を秘めているのも独特で、タフなレースになるほど真価を発揮するのはリボーとバックパサーをナタルマ(ノーザンダンサーの母)のインブリードでサンドイッチにした良血ならではといえる。タイトルに結びついているわけではないが、2000年のダービーでアグネスフライトとエアシャカールに次いで3着に入ったアタラクシアとか、1997年のジャパンCで7着とはいえピルサドスキーとエアグルーヴから僅か0秒5差に粘ったツクバシンフォニーは、東京2400mでデインヒルらしい底力が示された好例といえるだろう。○シックスセンスは見た目こそサンデーサイレンスらしい軽いつくりだが、道悪の京成杯やディープインパクトが全馬を粉砕した皐月賞のようなタフなレースで力を出しており、そこにはデインヒルの影響の強さを見て取れる。母の勝った仏G2アスタルテ賞は、タイキシャトルを含め数々の名種牡馬を送り出してきたドーヴィル1600mコースにおける牝馬重賞。その母の父は頑固なステイヤーであるニニスキだから、苦しくなってからもうひと伸びする持久力の裏付けとなる。ディープインパクトに完敗だったので、そんなに人気にならないのだろうが、デインヒル系潜在的ステイヤーのそういう重さを考えれば、前走は遅いお目覚めの兆しに過ぎず、完全に覚醒して能力全開となるのはここだという見方もできる。サンデーサイレンス×デインヒルという洋の東西、半球の南北をカバーする同期のコラボレーションは本命馬に負けないスケールを感じさせもする。 ダンスインザダークはダービーで1番人気で敗れた。菊花賞馬2頭と古馬になってからの安田記念勝ち馬を出している種牡馬としての姿を見ると、ダービーの負けは若気の至りであり、まだ完成していなかったためであるともいえる。それだけに▲ダンスインザモアも本物になるのは秋以降かもしれないが、皐月賞は外々を回って真っ正直なレースをし過ぎた。ニジンスキー3×4のインブリードに加え、キートゥザミント、ダリア、ビッグスプルース、シャンタンと、牡牝欧米取り混ぜた上質なステイヤー血脈を揃えており、前走の経験を糧に大飛躍を遂げるだけの器の大きさは備えていそうだ。正直に力を出すので一戦一戦の消耗が大きいダンスインザダークは凡走の後が狙い目という面もある。 △ニシノドコマデモは祖父母の代の並びが豪華。父母両系の祖父はそれぞれダンシングブレーヴとサッカーボーイという欧日80年代を代表する豪脚の主であり、グッバイヘイローはサンデーサイレンス登場以前のヘイローの代表産駒。シスターミルは春秋2度にわたってスペシャルウィークに煮え湯を飲ませたセイウンスカイを産んだ。その世代の良血王キングヘイローが父に据えられたとなると、圧倒的勢力を誇るサンデーサイレンス系連合軍に切り込むシーンを想像したくもなる。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2005.5.29
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